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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■生活の在り方の根本を見直す必要がある
 「もう1年半も仕事を探している。心が折れそうです」。一昨年のリーマン・ショックの影響で、自動車部品製造工場を雇い止めになった埼玉県在住の元派遣労働者の男性(36)は、長期間にわたる求職活動をそう語る。毎日のようにハローワークに通い、求人誌もまめにチェックして仕事を探したが就職できない。雇い止めに懲りて正社員の仕事を探し、問い合わせをした会社は100社を超え、30回近く面接も受けた。
 男性は「ぎりぎり生活が可能な15万〜16万円の賃金でもいいと思って探しているけれど、なかなかない」。深夜のアルバイトと貯金を取り崩して生活しているがそれも限界にきている。
 こうした声や「正社員で就職したが生活できない」などの相談をたびたび受けている全国労働組合総連合(全労連)青年部や首都圏青年ユニオン、学生団体や青年団体などが、ハローワークがネット上で公開している全国の求人を調べた。「資格なし。正社員を希望する22歳、男性」の条件で検索。見つかった求人について、その地域の最低賃金(時給)に月間法定労働時間の上限(173・8時間)をかけて最低賃金での月収を算出し、それ以下の賃金かどうかを調べた。
 全国平均では、約20万件の求人のうち1・74%の3516件で月収換算の最賃(12万3919円)を下回る結果となった。地域別では、神奈川県(3・02%)や秋田県(2・99%)、東京都(2・91%)、大阪府(2・85%)などで最賃以下の割合が高かった。
 埼玉県の男性のケースをあてはめると、最賃が735円で月収は12万7743円となるが、検索で出た8064件の求人のうち72件(0・89%)がその額を下回った。求人票の業種別では、美容(10件)やタクシー(7件)、運輸・配送(5件)などが多かった。
 ハローワークで出される求人は、最低賃金法などをクリアしたもので、時給で最賃を下回るものはない。だが、正社員でも週4日勤務など労働時間が短いケースでは月収にすると最賃を下回るケースが出てくる。厚生労働省職業安定局は「違法な求人はない」と説明するが、多くの会社は正社員にアルバイトなど兼業を禁止しており、実質的には最賃以下の生活をしなければならない。関東のハローワーク職員は「そもそも求人の過半数は非正規。半分以下の正社員の求人も低賃金など劣化が著しい。失業の長期化は本人のせいだけではない」と打ち明ける。
 さらに、現行の都道府県庁所在地の生活保護費に免除となる税金を加えた額と比較してみると、35%の求人が生活保護水準を下回った。調査メンバーの一人、野村昌弘・全労連青年部書記長は「望んでも正社員になれない雇用状況だが、正社員神話さえも崩れようとしている。生活できない雇用の実態が広がっている」と分析する。河添誠・首都圏青年ユニオン書記長は「資格などを特に持たない若年層が安定した生活をするに足る仕事を見つけるには高いハードルがある。自己責任と責めるのでなく、雇用の創出と支援が必要だ」と訴えた。
 雇用の創出と同時に、雇用の質を向上させる方策も求められている。【東海林智】
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東京朝刊

05月20日(木)
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