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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■5歳児餓死で父母を逮捕
 親には未成年の子を育てるためのさまざまな権利と義務がある。監護教育権、職業許可権、財産管理権、懲戒権などが民法に定められている。これらの親権を乱用すると家庭裁判所から親権喪失の宣言がされる。悲惨な児童虐待は乱用の最たるものだが、いったん宣言されると期限がなく親権全部を失うことになるため、申し立て自体が多くはない。
 
虐待の恐れがある子を一時保護したり施設に入所させたりするケースは増えており、その際に施設長の意向を優先するか、親権のある保護者の意向が強いのかをめぐって混乱が生じることが多い。親が強引に連れ戻そうとする、親権者の承諾が得られないために治療や手術ができない、療育手帳が取得できない、学校への入退学の手続きができない……などの問題が現場から噴出しているのだ。このため、法務省は一時的に親権を停止して子を預かる施設長や他の親族の意向を優先させることを検討しており、民法改正を法制審議会に諮問した。

 児童虐待防止法は07年改正で、立ち入り調査の強化、保護された子に対する親の面会や通信の制限を設けた。都道府県知事が虐待の恐れのある親に対して子へのつきまといなどを罰則付きで禁止することも盛り込んだ。とかく聖域視される親権を制限する流れは次第に強まっている。親権制限は、増え続ける虐待に少ない人員で対応している児童相談所や施設から歓迎されるだろう。
 ただ、安易な親権停止が行われないような措置も必要ではないか。虐待への取り組みの最終目標は親子関係の修復である。これまでも現場職員は親権の重さの前に悩み苦しみながら親と対(たい)峙(じ)してきたのだ。「親によって傷ついた子は、親によってしか癒やせない」。虐待の担当職員たちがよく口にする言葉である。

 深刻な虐待から子どもを救うには、親権制限について柔軟な運用ができる制度改正も必要だろう。しかし、停止期限や親権を回復する条件を明確にすべきだ。できるだけ早く回復するため、親に対するカウンセリングや研修を充実させることも求めたい。非協力的な態度を変えない親に研修を受けさせることはたしかに難しいが、家庭裁判所の関与を強めるなどして少しでも実効性のある対策を模索してほしい。

 また、民法改正にあたっては親権の中の懲戒権の削除が争点になりそうだ。厳しいしつけが必要な場面は当然ある。しかし、未成熟な子を監護し教育する義務の中でしつけは考えられるべきである。親の権利として体罰や暴力が認められているかのような考えの延長に児童虐待はまん延しているのではないか。
毎日新聞 2010年2月7日 2時30分


03月06日(土)
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