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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■食料危機を冷静に認識する必要がある
21世紀半ばには世界の人口が90億に達すると予測される中で、2030年までに食料生産を2倍にする必要があるとCGAIRの専門家チームは考えている。緑の革命を成功させるまでにかかった年月の半分で、第二の緑の革命を成し遂げなければならないわけだ。
食料生産は人口増に追いつけない?
およそ1万2000年前に人類が農耕を始めて以来、動物の家畜化、灌漑(かんがい)、水田耕作と、農業技術が進歩するたびに人口は増えてきた。食料生産の伸びが止まれば、やがて人口の増加も収束する。人類の歴史はその繰り返しだった。人口と食料資源の関係は、アラブ世界と中国の古い文献にも記されているが、この2つの関連性を正確に説明しようとしたのは、18世紀英国の経済学者で聖職者のトマス・ロバート・マルサスだった。
人口はなんらかの抑制要因が働かない限り、およそ25年に2倍のペースで、等比級数的に(2、4、8、16というふうに)増えるが、農業生産は等差級数的に(1、2、3、4というふうに)しか増えないと、マルサスは論じた。
「人口の力は、人類の生存を支える資源を生産する大地の力よりも限りなく大きい。そのため、生存が困難となり、人口を抑制する要因が常に強く働く」と、1798年刊行の『人口論』で彼は述べている。
マルサスによれば、人口を抑制する要因は、避妊や禁欲、晩婚化など意図的なものもあれば、戦争、飢饉、感染症など人々が意図しないものもある。彼は食料援助は最貧層だけに限定すべきだと主張した。多くの人々に食料を与えれば、出生率が低下せず、飢えに苦しむ子どもが増えるばかりだと考えたのだ。
産業革命で食料供給が飛躍的に増えた英国では、19世紀のビクトリア時代に入ると、マルサスの警告はたちまち忘れ去られた。さらに、20世紀に緑の革命が起きると、彼の理論は近代の経済学者から見向きもされなくなった。
1950年代から今日までに、世界の人口はかつてないペースで増えた。マルサスの時代と比べるとざっと60億人も増え、今や70億人に達しようとしている。にもかかわらず、農業技術が進歩したおかげで、大半の人々は飢えを免れている。人類はついにマルサスが考えた限界から解き放たれた?つい最近まで、多くの人々がそう考えていた。
豚肉消費量が増える中国
旧暦の9月15日、中国広東省の村では、高齢者を敬う盛大な催しが開かれ、村人は豪華な料理に舌鼓を打つ。魚介類、野菜、鶏肉、ハト、キクラゲ?さまざまな食材が使われた料理が並ぶなか、ひときわ目を引くのは、豚肉料理の豊富さだ。
世界的に景気後退が進んでいるとはいえ、中国経済の成長を牽引してきた広東省では、今もまだ人々の暮らしには比較的ゆとりがある。近年、中国では豚肉の消費が伸び、1993年から2005年までに、1人当たりの年間消費量は24キロから34キロと4割強も増えた。
「子供のころは、家で1頭だけ飼っている豚を毎年旧正月に食べたものです」。そう振り返るのは、養豚業のコンサルタント、沈光榮氏だ。肉にありつけるのはこのときだけだったという。植物の根っこから残飯まで何でも食べる丈夫な品種だったので、餌代はかからなかった。
だが、現代の豚はそうはいかない。中国では、食料の値上げに対する人々の不満も手伝って政治的な混乱が広がり、1989年に天安門事件が起きた。その後、政府は食料需要を満たすため、大規模農場への税の優遇措置を導入。沈氏は、広東省の経済特区、深センにいち早く誕生した大規模な養豚場で働くことになった。そこでは、トウモロコシと大豆の飼料に肥育促進剤を混ぜて、豚の成長を早めている。こうした養豚場は集約型畜産経営体(CAFO)と呼ばれ、ここ数年どんどん増えている。
中国で豚が大量に消費されれば、飼料に回される穀物が増え、世界の穀物需給が逼迫(ひっぱく)する。摂取カロリーで言えば、肉を食べるのは非常に効率が悪い。穀物そのものを食べるのに比べ、豚肉で同量のカロリーを摂取するには、最大で5倍もの穀物が飼料として必要になるからだ。飼料や車のバイオ燃料に回される穀物が増えたこともあって、世界の穀物消費は、1960年の8億1500万トンから、2008年には21億6000万トンへ増えた。
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06月06日(土)
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