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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 組織ぐるみの年金改ざん疑惑
 「古い事案が多く、事業主らに話を聞けなかったり、証言が不明確だった」と社保庁は釈明するが、関与の有無の聞き取りは自己申告。矛盾を追及するつめた聞き取りは行われなかったとみられる。中には、書面調査の段階で関与を認めながら、社保庁に直接事情を聴かれたら「記憶違いだった」と前言を翻した埼玉県内の社保事務所のようなケースもあった。「外部調査を含む調査の抜本的見直しが必要」(元職員)との指摘がある。
 ◇高徴収率、事務所間で競争
 厚生年金保険料の徴収率は、バブル崩壊後の90年代後半も98%以上、06年度も98・7%という「信じがたい数字」(現役の社保事務局職員)の高さを保ってきた。国民年金の納付率が70年代の9割から次第に下がり、昨年度は63・9%になったのと対照的だ。なぜこのような高水準が続いてきたのか。
 「社保事務所ごとの厚生年金の徴収率がグラフにされ、職場に張り出される。競い合う空気が自然にあった」。西日本の社保事務所元職員は言う。
 保険料徴収のめどが立たない滞納企業に対し、職員は「(個人事業者になって)国民年金に切り替え、業務が軌道に乗ったら(厚生年金に)また入れば」と伝えることが多かったという。
 今年8月、滋賀県内の社保事務所の元課長、尾崎孝雄さん(55)は、厚生年金加入記録の改ざんが社保事務所の組織ぐるみだと、民主党の会合で証言した。県社保事務局主催で毎月開く「収納対策会議」では、各事務所ごとに徴収状況や脱退事業所数などを報告。会議後、標準報酬月額をさかのぼって引き下げるといった、明確な手口こそ口にされないものの、「何とか工夫できないか」と、所長からも事実上の「指示」をされたという。
 さらに徴収率を維持しようとした背景として、厚生年金を国民年金より上にみる社保内の「序列」を指摘する関係者も多い。
 「(61年創設の)国民年金より、戦前からある厚生年金が『本流』という意識。10年ほど前までは人事交流もなく、保険料徴収こそ業務の柱という自負があった」(現役社保職員)という。
 ◇幕引き狙う官邸
 政府が、標準報酬月額改ざんに関する調査結果を9日に公表した背景には、年金記録漏れ問題にできるだけ早く幕を引き、次期政権の足かせを軽くしたい首相官邸の思惑が見え隠れする。
 政府は8月末時点では、9月12日までに調査結果や対策を公表する運びにしていた。しかし、1日夜に福田康夫首相の退陣表明で作業は中断。舛添要一厚生労働相も公表延期やむなしに傾いていた。
 ところが首相は2日、坂野泰治社会保険庁長官に「予定通り進めろ」と指示。厚労省幹部は「衆院選で民主党から追及されずに済むと考えたのでは」と受け止めている。
 そんな見方が出るのも、記録漏れ問題を早く決着させたい官邸の意向がうかがえるからだ。複数の関係者によると、官邸内には、前回6月27日の関係閣僚会議で「記録漏れ問題に2年間全力を挙げる」との方針を決定する構想があったという。事実上、2年で幕を引くという案だ。
 「最後の1円まで」と強調してきた舛添氏にとって、期限を切れば自らに責任が及ぶことになる。必死で巻き返し、公明党なども舛添氏に同調したため、首相は土壇場で期限を切るのをあきらめた。
 ◇月給30万→8万円 標準報酬、知らぬ間に減額
 仙台市の元会社員、斎藤春美さんは、92年4月から約3年間、東京都内の会社に勤め、約30万円の月給を得ていたが、94年4月、知らない間に会社が訂正届を出し、標準報酬月額を約1年半さかのぼって最低ランク(当時)の8万円に下げられた。将来受け取る年金額は、平均余命(85歳まで)を生きた場合、本来もらえる額より約142万円減る。
 偶然に記録照会してそれを知り、03年に国と会社を相手取って提訴。裁判で会社は改ざんを認め、「社保事務所から(引き下げを)指導された」との答弁書を提出した。04年11月の控訴審は、会社に天引き額と社保事務所に納めた差額の返還を命じたが、社保事務所の指導の違法性は認めず、上告審でこれが確定した。
 どれだけの標準報酬月額が改ざんされているかは、誰にも分からない。社保事務所の窓口などでは確認できるが、自宅で受け取る「ねんきん特別便」には標準報酬月額が載っていない。

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09月11日(木)
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