ID:22831
『日々の映像』
by 石田ふたみ
[257966hit]

■ 世界で最初に海底に沈む国
 案内してくれたエセラ・フォエタシさん(31)は、「このあたりでは年に1メートルくらい、海岸線が後退している。あそこのヤシの木も、来年の今ごろは海の中だ」とポツリ。遠浅の海に潜ってみると、10メートルはあろうかというヤシの木が数本、海底に横たわっていた。

■大潮で道浸水

 満潮時に直径30メートルほどになるバサファ島にも寄ってみた。海に浮かぶ盆栽のような美しい島だ。サンゴ砂が吹き寄せられて、ここ10年で島はむしろ大きくなっているというが、これ以上、海面水位が上昇すればひとたまりもない。

 海面水位の上昇が、国民生活へ与える影響も。

 現地のタクシー運転手(47)は、「大潮のときは道路は一面、水浸しだよ」と苦笑いする。海に囲まれていることもあり、この国では車の耐久年数は短い。浸水が繰り返されれば、さらに車の傷みもひどくなる。

 高潮に伴って地面から塩水がわき出すため、塩害で耕作できなくなったタロイモ畑も出ている。

 「海水温の急激な変化でサンゴの死滅もみられ、近海の漁獲量も減っている」(ラタシさん)

 日本よりも人口密度が高いツバルでは、食糧の自給もままならなくなり、缶詰など加工食品の輸入が増えている。

■政府も省エネ

 よりよい生活を求めて、海外移住を目指す人は年に100人以上。移民申請の代行業もしている国会議員のカウセア・ナタノさん(50)は「みんなツバルを愛し、後ろ髪を引かれる思いで出ていくんだ」と嘆く。

 危機感を強めたツバル政府も自ら、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減に動き始めた。政府庁舎のエアコンは午後4時で停止。バイオ燃料の導入も始めたほか、来月からは関西電力の協力で、サッカー場の観客席の屋根に40キロワットの太陽光発電パネルを設置する工事も始まる。

 電力はすべてディーゼル発電に頼っているが、太陽光で国の電力の1%強をまかなう計画だ。ラタシさんは「他国に要求するだけでなく、自らも排出を減らし、大国にアピールしたい」と語る。

 沈みゆく国土を救うために、何ができるのか。日本をはじめ、各国の取り組みも問われている。

                   ◇

【用語解説】ツバル
 日付変更線に近い、総面積約26平方キロメートルの赤道直下の島国。約1万人が9つの島に分かれて暮らしており、人口密度は日本より高い。国土はサンゴ礁からなり、標高は高いところでも5メートル程度。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、地球温暖化の影響で今世紀中に海面水位は18〜59センチ上昇するとされているが「この数値は過小評価だ」との意見もあり、今世紀中にツバルの国土全体が水没する恐れも指摘されている。

12月12日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る