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13匹目のバナナフィッシュ
by サキ
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■水鏡
「すげー富士山きれー」
本日ハ晴天ナリ。
車窓から見える薄曇りの地平線のある方角に、上半分真っ白になった、一月の富士山が見えた。
「はしゃぐことでもねーじゃんよ」
窘められてもやはり、それは絶景に映った。
しかし寒すぎる。
こうして携帯をいじくる指先が、何度もスリップする。
一月。
初めてここに立ってから、どれだけ過ぎたろう。
初めてここに立ったとき、何を思っていただろう。
悴む指先。
「気をつけろよ」
そう、足下は果てしなく広がっていそうな水面。
降りた駅から、しばらく歩いた。
覗きこむと、ふたりが映って、ゆらゆらと揺れる。
「凍らないのかな?」
「もっと寒くなれば、もしかしたらね」
「そんな寒くなったら死んじゃうよ」
「こんなふうに?」
手にした小石を投げ入れた。
ぐわんぐわんとめちゃくちゃな波紋を描いて、ふたりが消えかかる。
「だめ!!」
思わず大声を出した。
「消えちゃうよ!」
勢いついてむしゃぶりつくと、優しい目が笑った。
「水鏡さ。消えることはない」
「でも!」
そこにふたりが映っているのは違わないのだ。
「いいかい?」
噛んで含めるように、顔を覗きこんだ。深い眼の色だ。
「鏡の中の君がいなくなるのは恐ろしいこと。それは君がいなくなることだから。でも、水鏡は違う。ほら見てご覧。もうそこには」
果たしてそこにはすでに波紋は治まり、ただ覗きこむ、ふたりがいた。
ふたりは寄り添って、水面に小石を、投げ続けた。
本心では、このまま水面に映るふたりが消えて無くなることで、密かな心中が成り立てばと、ひとり静かに、願った。
01月09日(金)
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