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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAの回復率、まとめ
4ヶ月近く雑記を放置してしまいました(日々雑記どころか、もはや月々雑記ですらないという・・・)。

前回は「翻訳企画:AAの回復率」と名付けて、3人のAAメンバーによる論文?を翻訳して掲載しました。それが10回連載という長文でしたので、全部に目を通した方は少ないだろうと思います。そこで、今回はポイントになるところだけピックアップして、まとめてみようと思います。

まず始めに、「AAの回復率は5%であり、その数字はAA自身が発表したものだ」という主張について、その誤解の元と、正しい解釈についてです。

その元は、1990年にアメリカのAA内部で発行されたメンバー調査の報告書の中にある図です。



この図は、「AAにやってきて1年以内の人たち」が、現在何ヶ月目であるかという分布図になっています。つまり「AAメンバー1年目」の人を100人集めたとすると、その中に「1ヶ月目の人」が19人、「12ヶ月目の人」が5人いる、ということを示しています。

AAミーティングへの参加を続けることができず、途中で来なくなってしまう人はたくさんいます。この図は、100人をAAに送り込むと、1年後にAAを続けているのは5人だけ・・と言っているのではなく、19人中の5人が残っているということです。ですから、1年後の残存率は(元のデータから計算して)26%というわけです。

さらに、「3ヶ月AAを続けられた人」を分母にすると、そのうち56%が1年後もAAを続けている、という数字も出ています。AAに限らず、3ヶ月何かの行動を続けられた人は、その後もそれを継続できることが多い、それは経験的に知られています。

「90日間AAミーティングに出続けよう」というスローガンは、このデータが裏付けと言えるかも知れませんね。

さて僕は、昨冬にインフルエンザに罹患してしまい「イミビル」という治療薬を処方されました。この薬はインフルエンザ・ウィルスの増殖を抑える薬で、たった1回服用すれば十分なのだそうです。しかし、このような1回だけ服用すれば十分という薬は少なく、多くの薬は効果が出るまで継続して服用する必要があります。全治しない病気の場合には、ずっと薬の服用が必要だったりします。

AAのミーティングも1回参加しただけで来なくなってしまう人はたくさんいます。その人たちは、効果が出るまでAAの「服用」を続けられなかった、と考えることもできます。僕は薬の治験には詳しくありませんが、薬の効果を計るとき、期間の途中で服用を止めてしまった人も分母に入れるものでしょうか・・・。

さて、話を変えて、初期のアメリカのAAでは、「50%の人はAAですぐに酒をやめられ、25%の人は再飲酒があってもやがては酒をやめた」という主張をするAAメンバーがいます(僕も以前この数字を使ったことがあります)。これは実はビッグブックのp.xxv(25)の記述が元になっています。その文章はAAの創始者の一人であるビル・Wが書いたものです。

ビル自身が、AAの回復率は50%+25%=75%だと主張しているわけですが、残念なことにその根拠となるデータは示されていません。先の論文?では、AAの記録をあたって、初期のAAで実際に高い回復率を実現できていたことを調べ上げています。アクロン、ニューヨークに次いで3番目にAAグループが誕生した場所、クリーブランドでは実に93%が酒をやめて再飲酒しなかった・・と『ドクター・ボブと素敵な仲間たち』の中でクラレンス・Sが述べています。

けれど、この高い回復率をそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。AAメンバー候補者の酔っ払いは、まず入院して酒を切らねばなりませんでしたが、健康保険制度のない当時のアメリカで入院費を払える飲んだくれは多くありませんでした。そこで、AAのメンバーが保証人となり、本人に代わって入院費を負担しました。(文字通り経済的なスポンサーだったわけです)。そしてその金は、本人の回復後に返してもらうという算段でした。


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06月13日(土)
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