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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAの回復率、まとめ
もしあなたが、保証人を引き受ける立場になったら、どうするでしょう? なるべく、ちゃんと酒をやめて、金を返してくれそうな人を選んで助けようとしたのではないでしょうか。酒をやめる気がなさそうなヤツは放っておいたほうが良い。なぜなら退院後すぐに再飲酒してしまい、結局金を返してもらえない、ということが起こりうるからです。

そんなわけで、事前選択(プリスクリーニング)が行われたことは確かでしょう。選び抜いた人を分母におけば、回復率の数字は高く維持できます。今日のAAでは、そのようなプリスクリーニングは行われていません。参加を希望するアルコホーリックは誰でもAAに参加できます。分母が違えば、回復率の数字も変わるのは当然と言えます。

初期の75%という数字と、現在の(誤解に基づくとは言え)5%という数字を比べると、その違いがあまりにも激しい。その大きな違いのせいで、AAがすっかり「役立たず」になってしまったような残念な気持ちになります。しかし、75%という初期の数字は、強力なプリスクリーニングの結果であることがわかりました。また、現在の5%という数字も誤解に寄るものであることが分りました。

つまり回復率というのは、分母に何を置き、分子に何を置くかで、大きく変わってきます。それを無視して回復率の数字を比較してみても意味はありません。

さて最後に、現在のAAはどれほど有用なのでしょうか。

AAによるメンバー調査は、メンバーシップのプロフィールを明らかにするためのもので、回復率を計るためのものではありません。しかし、参考になるデータはあります。先に示したように、

・4ヶ月目にもAAミーティングへの出席を続けている人たちは、その56%が1年経過した後にも出席を続けている。

3ヶ月間AAに出続けた人は、その半数以上が1年後もAAに残っている、というわけです。1年後にAAに残った人が酒をやめているか、飲み続けているかはデータから読み取ることはできません。けれど、「AAミーティングに出続ける人たちは、やがて酒をやめていく(いつまでも飲み続けながらAAに通う人は滅多にいない)」ということを、私たちには経験的に知っています。

そうしたことを踏まえると、「AAに3ヶ月間出席を続けた人の、およそ半数は、1年後にAAで酒をやめている」という予想を立てたとしても、それほど現実から離れていないでしょう。そう考えると、AAは強力な回復ツールに思えてきませんか?

まあ、ダイエットであれ、トレーニングであれ、勉強であれ、何であれ3ヶ月間続けるのが難しいのは確かですけれど・・・。

前回取り上げた、AAメンバー3人による論文?は、こちらに掲載してあります。

アルコホーリクス・アノニマス(AA)の回復率
〜現代における神話と誤解〜
http://wiki.ieji.org/doc:aa_recovery_outcome_rates

06月13日(土)
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