ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その9)
クリーブランドのメンバーたち(およびオハイオ州アクロンのメンバーたち)がオックスフォード・グループから独立したとき、彼らは候補者に対するたいへん厳格な事前選択を採用していた。現在では、これは、その精神においても、また字句的にもAAの伝統3の正反対であったと見なすAAメンバーがおそらくいるだろう。また、ビギナー向けの厳格なミーティングのシリーズを、通常のミーティングとは別に行えば良いと解釈する人たちもいるだろう。アクロンやクリーブランドのメンバーたちは、候補者とたいへん熱心に取り組んだ。初期のAAメンバーの多数は、絶望的でどんな手助けも役に立たないと見なされたアルコホーリクたちだったことは考慮されるべきである。

『ドクター・ボブと素敵な仲間たち』にクリーブランドでの成功例が記述されている。

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ウォーレンは、つぎのように続けている。25 「わが家で、クラレンスがまず私に話をしたあと、他の人たちがやってきて私に語りかけました。いまのように、一人の人と話しただけでは、ミーティングには参加させてくれなかったのですよ。ミーティングで、どのようなことを聞くことになるのか。またプログラムの目的はなにか。それを、ある程度までわかっていなければならない、と彼らは考えていたのです。つぎに、クラレンスから三ヶ月間にわたり毎晩、比較的新しいメンバーたちの家に通うようにと言われたので、26 私は九〜十人のメンバーたちの話を聞きました。ミーティングに初めて参加する前には、さらに、ビッグブックを読まねばなりませんでした。その結果、彼らが何をやろうとしていたのか、私はかなり理解できるようになっていたと思います」

25. 『ドクター・ボブと素敵な仲間たち』 p.247
26. 今日では、これは「90イン90」あるいは「90日間で90回のミーティング」と呼ばれるものだ。

下記は『ドクター・ボブと素敵な仲間たち』から、オハイオ州のクリーブランド・グループが93%の成功率を達成した条件について抜粋してある。27 クリーブランドで93%の成功率が達成できたのは、これまでに論証してきたように、事前選択済みの候補者についてであろう。

27. 『ドクター・ボブと素敵な仲間たち』 p.383-384, p.385-386

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クリーブランドでのミーティングは、アクロンとは、いくらか違ったかたちで発展していった。「ミーティングは声に出してのお祈りから始まりました」とクラレンス・Sが語っている。「スピーカーは、四週問まえに選ばれ、スピーチの時間は四十五分、最後は『主の祈り』でしめくくりました」
「そのあと、ミーティングが再開され、説明や質問など、ざっくばらんな話し合いがおこなわれていたのです。ミーティング全体は、一時間半から二時間でしたね。前半は禁煙で、後半の懇談のときには喫煙がゆるされていました」
「たばこは良くないですよね」とクラレンスがつぶやいた。「皆さん、気楽に考えすぎですよ。私は、すこしはマナーというものが必要だと思っているのです。当時のAAは、いまより、もっと効果的でした。クリーブランドの記録では、AAにつながった人の九十三パーセントの人が、再飲酒はしなかったのですよ。ですから、AAにいる人がスリップしたことを知ったときは、それはもう本当にショックでした。それにしても、いまのAAは、厳しさが欠けているように思います。だれかが紛れ込んでいても平気なのですからね」
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『ドクター・ボブと素敵な仲間たち』には、クリーブランドでの候補者に対する厳しい事前選択についてさらに記述がある。こうした慣行は消極的あるいは残酷な理由で行われていたのではなく、実際的な理由があったことがわかる。それは極めて困難で挑戦的と言えるほど慢性アルコホーリクの数は多く、それに対してAAのプログラムの効果を示す生きた見本として奉仕できるような信頼できるメンバーは初期においてはあまりに少なかったことが、こうした事前選択の背景にあったことだろう。

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02月03日(火)
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