ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その9)
セクションf)は、なぜ初期のAAが良好な成績を残せたのか・・という疑問に答えます。

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f) 初期AAにおける予備選択(プレスクリーニング)

初回で50%、最終的に75%にもおよぶ成功率(初期のAA におけるものとしてしばしば引用されるもの)を達成するためには、対象者をあらかじめ選択しておくか、もしくは比較的少ない回数しかミーティングに来ない本当の内面的モチベーション(動機)を欠いた人々を除外する、あるいはその両方を行う必要がある。

(AAは)その始まりから、断酒してしらふになりたいと望んでいる人たちと一緒にやることを望んでいた。ビッグブックの英語版182ページ(和訳は『アルコホーリクス・アノニマス 回復の物語』Vol.1 p.17)には、やがて「アルコホーリクス・アノニマス第三の男」となる男が、AAの共同創始者ビル・Wとドクター・ボブが入院中の彼の元を最初に訪れた時のことを書いている。

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そして私に向かってこう言った。「あなたは酒をやめたいですか? あなたの飲酒のことをとやかく言いに来たのではありませんし、あなたの飲む権利とかそういうものを取り上げに来たわけでもありません。私たちにはプログラムがあるんです。このプログラムを実行することによってしらふでいることができます。このプログラムを必要とし、求め、望んでいる人に伝えるのも、このプログラムの実行です。ですから、もしあなたがそんなプログラムは必要ないということでしたら、あなたの時間をつぶすのはやめて、よそへ行って別の人を探すことにします」
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初期のAAにてこのような事前選択が普通に行われていたのは、ひとつは候補者が(典型的な慢性の、あるいは「どん底の」)アルコホーリクであることを確かめるためであり、また候補者をグループに連れて行く前に(あるいは彼らのスポンサーになる前に)、彼らに「降伏」の経験をさせるためである。

初期のアクロンにおいては、AAの共同創始者ドクター・ボブは候補者と一緒に取り組み始める前に、彼らに対して精力的な事前選択を行っていた。こうした事前選択の手法により、良い選択眼を持てば、成功率を上昇させることができた。

ドクター・ボブの死後、シスター・イグナチアがセント・トーマス病院で高い成功率を維持できたのは、AAメンバーに対して事前選択をするよう彼女が仕向けたからである。彼女はアクロンのAAの社会的地位の高いメンバーに、新人たちの「スポンサー(保証人)」となることを要求した。それは入院中にAAメンバーが面会に来るというだけでなく、新人が勝手に退院してしまったり、入院費用を支払わない場合に代わって支払うことに同意することを意味した。これによって事前選択が厳格なものになったことは疑いない。シスター・イグナチアはこの病院で治療を受けるチャンスを通常一回しか与えなかった。まれに彼女は二回目の入院を許したが、その患者を他の入院中のアルコホーリクたちとは完全に隔離させたのは、士気の低下を防ぐためだった。さらに、三回目のチャンスは誰にも与えられなかった。これも「成功」率を上昇させるのに役立った。ニューヨークやクリーブランドでも同様の試みが行われていたと思われる。

アルコホリズムの治療センターが連続して何回でも治療に戻って来ることを許すと、見かけの成功率は明らかに低下する。このことについての言及は、Mary Darrahによる伝記『シスター・イグナチア』にも見られる。ビル・Wも後に取り上げる論文 “On the Military Firing Line in the Alcoholism Treatment Program”(陸軍におけるアルコホリズム治療プログラムの発火点)という論文の中で記述している。ビルはセント・トーマス病院にシスター・イグナチアを訪ね、彼女のやり方を見た様子を詳しく述べている。


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02月03日(火)
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