ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その7)
本論でこれまでに引用したように、1960年のゼネラル・サービス評議会でビル・Wはこのように言及している。「けれど冷静に考えれば、私たちのソサエティが成し遂げたことは、アルコホリズムという問題全体に小さなひっかき傷をつけたに過ぎません。そのことを無視するわけにはいかないのです」。とはいうものの、AAは表面に小さなひっかき傷をつけただけでなく、その候補者の多くを助けている。

AAの成功についての主張を検証する:

AAの成功率を「50%+25%」とする主張は、1940年を最初に、その後おびただしい回数引用されてきた。そこから生まれてくる疑問は、他にも統計があったにも関わらず、なぜこの3つのカテゴリ(つまり、50%がすぐに酒をやめ、25%は飲んだが戻ってきて、25%が失敗)の値が70年以上にもわたって固定され変化を受けずに残ってきたのか、である。

この数字は事例的なものに基づいたもの(訳注:統計的でないという意味)だが、繰り返し引用されるうちに、決定的に正確だというイメージが与えられた。ではあるものの、推定に含める候補者の範囲と条件を考慮に入れれば、このAAの成功率の推定はまず妥当と言えよう。

AAの成功率(あるいは失敗率)を議論する上で、あまりにしばしば欠落しているのは、AAミーティングにやってきた、あるいはAAメンバーと接触した候補者のうち、ほんの一部だけがその先に進むことである。その人数は、世界に手を伸ばそうとするAAに難題を投げかけている。

AAの共同創始者であるビル・Wは、AAにやってきた人のうちAAに真剣に取り組むのは20%~40%だと推定されると過去に述べている。ビル・Wによる「50%+25%」の成功率は、このセグメント(部分集団)に限って適用したものである(その後もそうであった)。ビル・Wはこの重大な限定条件を、American Journal of Psychiatry(1949年11月)、ビッグブック第2版の序文(1955年)、そしてニューヨーク市アルコール医学会(1958年)で報告している。

AAに顔を出したけれどAAに取り組まなかったという60%から80%を含めて結果を計算することは非合理的である。それは何らかの医学的方法の有効性を測る際に、その医学的問題を抱えながらも医学的な手助けを求めない人たちまで含めてしまうのに等しいからだ。AAの回復プログラムについても同じことが言える。

AAのビッグブックの副題には「何千もの男女がアルコホリズムから回復した物語」とあるが、量に関して言えば、過去70年あまりの間に「何千人」の成功は、「何百万人」の成功へと手渡されていった。

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(続きます)

02月01日(日)
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