ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■翻訳企画:AAの回復率(その3)
1997年の調査について、初めてAAに参加して最初の1年間のそれぞれの月数の回答者数を、最初の1年の回答者数の合計で割った数を点破線(−・−・)で示している。1980年の調査について、同じデータを++線で示している。1983年の調査は点線(・・・・)で、1986年の調査は破線(− − )線で、そして最後に1989年の調査は実線で示してある。縦軸は5回の調査について各月に分配されたパーセンテージである。

図C-1 5回の調査の平均

グラフの下には「5回の調査の平均」の表が置かれている(上に再掲した)。これによると、最初の1年目の回答者のうち19%が1ヶ月目である。3ヶ月目、4ヶ月目の数字はそのおよそ半分になっており、これを元に報告書の著者は「AAにやってきた人のおよそ半分は3ヶ月以内に去る」と解釈している。

本論の後に掲げる図1には「1977〜89年の調査における最初の1年の保持力」という題をつけてある。その図ではこれと同じ情報を、保持率(もしくは脱落率)の曲線として描くことで、より分かりやすく示している。

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付録C続き: このような整然とした結果を説明できるメカニズムがあるとすれば、「新しく来た人たちが最初の1年のあいだに徐々に脱落する」こと以外にないだろう。わずかに慰めを得られることがあるとすれば、去った人たちの多くはまた戻ってきて、この表の中の数字にすでに含まれていることである。
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最初に少々ミーティングに参加してから来なくなった人たちの多くは、後になってAAに戻ってきて断酒を成功させている。自動車のディーラー(あるいはその他の販売業者でも)は、売った車の数に注目する。ショーウィンドーを覗き込んだだけで何も買っていかない人たちの多さを嘆くことはしない。

AAの共同創始者ビル・Wは1939年の手紙の中でこう書いている。「ここニューヨークでも事情は同じだった。私は6ヶ月にわたってたくさんの人に話しかけたが、永続的な結果は何も得られなかった。この時点の私は、自分が世界中の酔っ払いを救う役割を神によって与えられた、という妄想に取り憑かれて励んでいたのである」4

4. “Pass It On” p.226(AAWS)

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付録C続き: 2年目以降も同様の脱落傾向が続いているが、より緩やかになっている。数年を経るうちに、断酒を続ける多くの人がAA内での活動を減少させていくので、このような標本では彼らの存在を適切に表すことができなくなる。
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本論のb) 節の題名は「最初の1年の保持率」だが、c) 節の題名は「長期断酒者の増加」となっており、長い期間の断酒とAAへの継続的な参加について、これまでの調査から何が分かるかを扱っている。

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付録C続き: この調査の目的は、こうした脱落傾向の原因を明らかにすることでもないし、本人の意に反して(AAに)送られてくる人たち、自分がアルコホリズムであることが納得できない人たち、AAプログラムのさまざまな特色を受け入れらない人たちについて、何らかの提案ができるわけでもない。しかしながらここに示された結果およびそれがAAに投げかける課題は、AA共同体に広く理解されているだろう。
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アルコホーリクス・アノニマスでは、一切アルコールを口にしないことが断酒を続ける容易な方法であると教えている。このことは、AAが飲酒をコントロールする方法を教えてくれるところだと期待してやってきた人たちが失望して去る大きな理由のひとつになっている。アルコホーリクがAAに来る理由が、AAに行かない理由を上回ったときに、その人に回復のチャンスが訪れる。

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付録C続き: この結果は、昔から言われている「半数がすぐに飲酒がやめられて、25%も最終的には酒がやめられる」という言葉を否定するものとして拒絶する人も多いだろう。しかしその言葉は初期の(AAを)観察したものだ。その時代から現在までに社会にもAAの中にも変化が起きて、状況が変わってしまったことを疑う理由はない。調査から得られた他の結果と同様に、このことも「変えられるものを変えていく」という課題をAAメンバーに投げかけるのである。
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01月26日(月)
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