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つらつらきまま
by seri
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■百合子さんを求めて〜蒲田・世田谷編

蒲田駅前図書館に、「海」「新潮」「文藝」の武田百合子関連記事のバックナンバーを探しに行く。
 「文藝」のバックナンバーは不明とのことだったので、「海」と「新潮」の該当号を持ってきてもらい、コピー。
 「海」で連載していたものは映画の感想。
 「日日雑記」を映画に特化したような文体だった。
 「新潮」は、泰淳氏死去の2年後、5年後の状況を綴った単発記事だった。

渋谷の東急百貨店の古本市に行く予定があったので、足を延ばして世田谷図書館にも赴いた。
 最寄駅は桜新町。
 日本で一番有名な一家が住んでいる、とされている街。
 
 ここでは「クロワッサン」「婦人公論」を持ってきてもらう。
 「クロワッサン」では、泰淳氏の晩年の様子が日記を読み返すということで語られていたが、いかにも百合子さんらしいと思う記述があった。
 泰淳氏が亡くなる2か月前、洋ものの成人映画が下の村でかかるというので、夫を誘ってみたら、普段穏やかな人なのに「俺はそれどころじゃない!」と凄い剣幕で怒った、というエピソードを挙げ

 >いま思えば、やっぱり普通の状態じゃなかったんですよね。そりゃぁ、ポルノ映画どころじゃないですよね。もうすぐご臨終なんだから。

 と振り返っていた。
 “もうすぐご臨終なんだから”というところに、豪快すぎるほどのしみじみさが表れていると思った。

 また、婦人公論では「日日雑記」の出版関連でインタビューを受けていたが、体調が整えば今年も冨士の山荘に行く予定だと言い

 >夏は向こうで武田と遊んできます。

 という百合子さんの言葉でインタビューは終わっている。
 ただし、このインタビューの約半年後、百合子さんは泰淳氏と同じ病気で、夏を迎えることなく、この世を去っている。
 このことを思うと、この最後の言葉はある種の悲しい予感を覚えさせる。

渋谷の古本市は、池袋のリブロで行われている古本市ほどには個人的な収穫が無かったので、早めに切り上げ、上野へ行く。
 16日まで上野動物園が夜間営業を行っているので、覗きたくなったのだ。
 上野動物園に来たのは27年ぶり。
 叔父が関東で婚約するため、一族で上京することになり、それにかこつけて幼稚園を10日ほど休み、東京観光をしたのだ。
 5歳だった私の記憶にある上野動物園は、ペンギンが予想外の速さで泳いでいたこと以外ない。

 夜の上野動物園。
 タイミングが悪かったのか、トラもライオンもどこにいるのか分からなかったものの、ニホンザルやゾウは分かりやすく動いていて、人気者だった。
 意外にも花火大会の花火も綺麗に見えたので、もしかしたら穴場だったのかもしれない。
08月14日(土)
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