ID:15636
つらつらきまま
by seri
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■離れられない

今の家を借りて6月で6年。
 今年は更新の時期なので、思い切って多少家賃を上げて、今より広いところ、二口コンロが使えるところに引っ越すかと家探しをしていたら、会社の最寄駅の新築駅近物件が見つかった。
 その物件の所在地を載せている不動産サイトがあったので、日当たり具合と周囲の夜の状況を確かめるため、昼休みと仕事終わりに行ってみた。
 日当たりは申し分ないし、大通りに面しているので多少の騒音は致し方なさそうだが、人通りは絶えないので安全面も問題はなさそう。
 マンションの設備もカラーモニターインターフォンやエレベーター内防犯カメラ設置、ダブルロックに当然オートロック、浴室内乾燥機など、フル設備なのに家賃は決して安くないけれども周囲の相場から考えるとお得。

 問題が何もなさそうなので、不動産に仮押さえの申し込みをし、11日に改めて説明を聞くことに。
 しかし、それを決めた途端、迷いや不安が生じだした。
 今住んでいるところと比べると買い物が不便になることや、車の騒音や空気の汚れ具合など、挙げていくとキリがないが、最大の迷いは、<今住んでいる街から離れてしまうこと>だ。

 上京が決まり家探しをすることになった時に不動産から3件の候補を見せてもらったが、今の家は駅に降りた瞬間、とてもほっとした。
 (ここは遊ぶ街でも仕事のための街でもない。“住むための街”だ)と感じた。
 そして、内見のため部屋に入ったら、窓から太陽の光が気持ち良く降り注いでいて、(ここがいい!ここに絶対住みたい!ここじゃなきゃ嫌です!)と、部屋も街も一発で気に入った。
 引っ越しを検討している物件がある街もそこそこ良いところだけど、“この街に住みたいなぁ”というようなことは、睡眠不足の朝以外に思ったことは考えてみればなかった。

まだその物件に住めると決まったわけではないし自分が(引っ越したい)と思って決めたことであるのに、だんだんと引っ越し自体がブルーになってきた。
 不動産に行くために電車に乗ったら滅多に私は遭遇しない事故による運転見合わせ発生。
 なんだかもう出鼻がくじかれてしまい、(…今回の物件、決めない方が良いという何かの神様の思し召しではなかろうか)という思いがフツフツ湧いて来た。
 数分遅れで、不動産に着き詳細を聞く。
 会社の近所にあるので物件の所在地はもう確認済みであることと、それを踏まえた上で騒音や空気の汚れなど気になることを訊ねてみたが、あまり要領を得ない。
 まだ完成していないので内見は来月初めからとのことで、部屋の広さや日当たり、周囲の環境など、気にしていることを確認できないまま借りなきゃいけないのかと思うと、ますます気分は萎えて来た。
 物件情報を見る限り、今の家に住み続けるより良いことだらけになる筈なのに、そんな気がしない。
 しかし、もう仮押さえの申込み書類の手配がどんどん進んでいる。
 (まぁ…住めば都ということわざもあるし、取り越し苦労の杞憂かも)と自分を言い聞かせていたら、不動産の方が

 「あれ...お客様。この物件なんですが、住所じゃなくて地番が載ってますので、もしかしたらお客様が見たのはこの物件ではないかもしれません」

 と言い出した。
 
 円満にこの契約を回避できる最後のチャンス。
 ご覧になられたマンションはこの外観でしたか、と見せられたのは確かに私が確認したマンションだったが、私の口から出てきたのは「あっ、違いますね...」。
 
結局、考えていた物件と違うということになり、仮押さえは流すことになった。
 その他、今住んでいる街で今の家より広さや設備のグレードが上がる物件もいくつか内見をしてみたが、今の家を見た時のような感覚は得られず、むしろ今の家への愛着がどんどん湧くことになり、結局引っ越し自体を見合わせることになった。

 考えてみれば数年前空き巣に入られたのに、それでも引っ越しをしなかったぐらい、離れ辛かったこの家。
 多分、6月の更新もこの分ならするだろう。

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02月11日(水)
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