ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■やんぽう通信から
「もう誰もおらんもん。ねえ、どうしょうか」

ぼくはミエコの足元を見た。
生脚だった。
「お前、ストッキング持っとるか?」
「うん」
「それなら、ストッキングはけばいいやろ」
「え?」
「そうすりゃ、パンツはずれんやないか」
「あ、そうか!! しんちゃん頭いいねえ」
ミエコから褒められても、全然嬉しくはない。
しかも、こんなことで。
しかし、ミエコはよほど感動したのだろう。
後々までこのことを言っていた。


【6】
トイレで思い出したことがある。
ミエコはよく「今日も長いウンコが出た」などと言っていた。
ぼくが「どのくらいの長さがあるんか?」と聞くと、ミエコは「このくらい」と手で示した。
どう見ても3,40cmはある。
「そんな長いウンコなら流れんやろうが」
「うん、よく詰まるよ」
「詰まって、そのままにしとるんか?」
「そんなことするわけないやん。ちゃんと流すよう」
「でも、流れんのやろうが」
「だけ、割り箸使う」
「は?」
「ウンコを引っ張り出して、切って流す」
「お前、トイレに入るのに、いちいち割り箸持って入るんか?」
「いちいち、持って行くわけないやん」
「なら、どうするんか?」
「ある所に隠しとう」
「使ったやつをか?」
「うん」
「バカか、お前は。汚かろうが!」
「いいやん、ちゃんと洗って置いとるんやけ」

暇になると、ぼくたちはよくミエコに常識テストを出していた。
「横浜県」と言ったり、九州は福岡県の中にあると言ったり、実にあやふやな知識しか持ってない。
そこで、少しでも常識を身につけてもらおうと思って、始めたのである。
ま、楽しんでいたのであるが。
「ミエコ、都道府県っち知っとるか」
「そのくらい知っとるよーだ」
「じゃあ、都はどこか?」
「簡単やん。東京」
「道は?」
「バカにして、北海道よ」
「ほう、じゃあ府は?二つあるんやけど」
「簡単やん。京都とねえ・・・」
「京都とどこか?」
「京都とねえ・・・」
「京都はわかった。あとどこか?」
「うーん・・・」
「知らんとか」
「知っとるよ。ちょっと出てこんだけ」
しばらくして、
「あ、わかった」
「そうか、どこか?」
「京都とねえ」
「京都と?」
「岐阜!」

いつも、ミエコはぼくたちの期待に応えてくれた。
1986年の11月、マニラで若王子さん誘拐事件が起きた。
中指が切断されたような写真が新聞に掲載されたり、いろいろと話題の多い事件だった。
当然、このことは会社でも話題になった。
― フィリピンは恐いところやねえ。
― 時計とかブレスレットとか奪うのに、なたで手首切断するらしいよ。
― 東南アジアや南米は、そういうところが多いらしいね。
― 治安が悪いと、聞くしね。
― この会社は海外に支店がなくてよかったねえ。
― 若王子さん、もう、殺されとるんやないやろか。
― いや、殺されてはないやろう。プロはむやみに殺さんというし。
― ビジネスやけね。
― そうそう、若王子さんは大事な商品やけね。
そんな話の中に、ミエコが入ってきた。
「ミエコ、お前若王子さん、知っとるか」
「そのくらい知っとるよ。ニュースでいつも言いよるやん」
「おう、お前賢くなったねえ」
「当たり前やん。もう大人なんやけ」
「そうか、もう20歳越えとるけのう」
「ねえ・・・」
「ん?」
「若王子さんっち、どこの国の王子様なんかねえ?」

  つづく

10月14日(火)
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