ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■やんぽう通信から
ここで泣かれても困るので、うちの売場の女の子に「何も聞いても答えんけ、ちょっと奥に連れて行って、事情を聴いてやって」と言って、休憩室に連れて行ってもらった。
一部始終を見ていた何人かのお客さんがいたが、みな不思議な顔をしていた。
そりゃそうだろう。
なぜなら、シンケイのことで泣いているのだから。

その後、ミエコは家に帰った。
辞めるんじゃないか、と心配したが、翌日ミエコは元気に出勤してきた。
それ以降ミエコは、Oさんの悪口をぼくたちの前で言うようになった。
逆にOさんは、ミエコのご機嫌を取るようになった。
その状態が、しばらく続いた後に、シンケイOさんは会社を辞めた。
別に、原因がミエコにあったわけではなかった。
会社が自分を辞めさせようとしている、と勝手に思い込んだためである。
「会社がそういうつもりなら、おれのほうから辞めてやる!」と言い放ち、シンケイOさんは会社に来なくなった。
誰もが、「別に会社は、シンケイに何もしてないやん」と言っていた。
上のほうも、「O君は何があったんかねえ?」と首を傾げるばかりだった。


【3】
このころからぼくは、ミエコとよく話をするようになった。
素直な子だな、と思ったが、話のところどころに「わからん」が入ってくる。
ある日、朝礼の時に、店長が業界の動向や、店の方針について話していた。
みんなメモを取ったりして、その話を聞いていた。
その時、突然ぼくをつつく者がいた。
ぼくの横にいた、ミエコである。
ミエコは小声で、「しんちゃん、わからん」と言った。
「は?」
「わからん!」
「何がわからんとか?」
「店長の話」
「わからんでもいいけ、黙って聞きよけ」
「だって、わからんもん」
「後で教えてやる」
「うん」
朝礼が終わってから、ぼくはミエコに店長の話の内容を、わかりやすく教えてやった。
しかし、それでも「わからん」だった。

いつしか、この「わからん」が気になるようになって、ある時、ぼくはミエコに聞いてみた。
「ミエコ、お前バカやろ?」
こういう言い方をされると、普通の人は当然怒るだろう。
しかし、ミエコは違った。
「会社では、バカを隠しとったのに。しんちゃん、お願いやけ私がバカなの隠しとって」である。
「隠してもバカはわかるぞ」

それから、ぼくのミエコに対する態度は、自ずと変わっていった。
ぼくはバカが好きである。
いつも好奇の目で、ミエコを見るようになったのだ。
つまり、観察の対象であった。

さて、シンケイが辞めた後、Mさんという方がテープの担当になった。
この人はおとなしい人で、前のシンケイとは正反対の性格をしていた。
ところが、たった一つであるが、シンケイとの共通点があった。
それは体臭である。
シンケイは臭かった。
それにも増して、Mさんは臭かった。
その会社は、ブレザー着用だったのだが、Mさんはいつも脇のところに汗が滲み出ていた。
鼻を突く、うどんの出汁のような臭いだった。
ミエコはみんなから、「お前は、よっぽど体臭のある人に縁があるのう」とからかわれていた。

ミエコは、Mさんとは何のトラブルも起こさなかったが、それから間もなくして、レコード売場に異動になった。
レコードの人間が辞めたため、急きょミエコが配属になったのだ。
それからミエコの本領が発揮されるのだった。


【4】
その頃、ぼくのいた楽器部門と隣のレコード部門は、元は一つの部門だった。
しかし、責任者が辞めたために、主に楽器を担当していたぼくが楽器の、またレコードを担当していたT君がレコードの、それぞれ責任者に昇格した。
しかし、その当時は人員が少なく、お互いに助け合ってやっていた。
ミエコがきたのは、ちょうどレコードの担当者が続々と辞めた時期だった。

元々一つの部門だったため、部門の会議や残務整理はいっしょにやっていた。
その残務整理の時、ぼくとT君はよくミエコで遊んでいた。
ある日、ぼくらが残務整理をしている時、ミエコが暇そうにしていた。

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10月14日(火)
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