ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■今日は何の日?
「夏休みの宿題を提出してたら、考えたんだけどねえ。まあ、頑張ってくれたまえ」
「試験はいつですか?」
「1週間後だよ」
「範囲はどこですか?」
「範囲?1年間やったところだよ」
「全部ですか?」
「そうだ」
目の前が真っ暗になった。
ただでさえわからない生物なのに、1年間分を1週間で勉強しなければならないとは。
電話を切り、さっそくぼくは担任に連絡した。
「しんたですが・・・」
「おう、今電話しようと思っとったところやった。聞いたか?」
「はい。今電話がありました」
「しかたないのう。まあ、頑張ってくれ」
『生物T』と書かれた分厚い教科書を開いた。
「はあー。こんなのわかるわけないやん」
ぼくは泣きたい気持ちになった。
しかし、このまま進級できないとなると、こんなにカッコ悪いことはない。
今まで一緒に遊んでいた奴が上級生になるなんて耐え切れなかった。
とにかく1週間目いっぱいやろうと思い、ほとんど寝ずに勉強した。
テレビは一切見なかった。
休憩中は、教科書を見ながらギターを弾いていた。
風呂に入る時も、トイレに入る時も、ぼくは『生物T』の教科書を手放さなかった。
これほど勉強したのは後にも先にもこの時が初めてだった。
1週間後、学校に行った。
まだ充分ではなかったが、やることはやった。
『ミトコンドリア』や『デオキシリボ核酸』も言葉だけは覚えた。
試験は70パーセントほど解けた。
あとで答合わせをしたけど、間違ってはなかった。
試験が終わり、学校にいてもすることがないので、家に帰ることにした。
ちょうど家に着いた時だった。
電話がかかった。
「しんたか」
「はい」
担任からだった。
「帰ったところを悪いが、ちょっと来てくれんか」
「今からですか?」
「おう」
またもや目の前が真っ暗になった。
『だめやったか・・・』『留年か・・・』『嫌やのう・・・』『あいつとあいつが笑うやろうのう・・・』『あの子も上級生になるんか・・・』
学校に行く途中、いろいろなことが頭をよぎる。
学校に着いた。
職員室前で待っていると担任がやって来た。
真面目な顔をしている。
『やっぱりだめか・・・』
担任は一息つくと急に笑顔になり、「よかったのう。大丈夫やったぞ」と言った。
ぼくは肩の力が抜けた。
『大丈夫やったら、電話で済むやん』と思ってもみたが、とりあえず素直に喜んだ。
これに懲りて、その後は追試を受けるようなドジは踏まなかった。
1年の時の担任との交流はその後も続いて、学年末テストが終わるたびに「おう、今年は追試なしやのう。よう頑張った」と言って電話してきた。
卒業の日に一番喜んでくれたのもこの先生だった。
さて、本題の「今日は何の日?」に入る。
今日3月7日は、ぼくが28年前に追試を宣告された日である。
以上。
03月07日(木)
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