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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■無責任賛歌事始/『エマ』6巻(森薫)
 台風、午前二時ごろまで吹き荒れる。
 これだけ長い間九州に居座ったってのも、生まれてこの方、経験したことがないが、なんでもいつもは台風を東へ押し流す上空の偏西風が、今回はピタッと止んでいて、それでゆったりゆったりと進んでたってことのようだ。
おかげで、ずっとマンションの部屋に閉じ込められた格好になってしまったが、こうなると落ちつかないのがしげである。そもそも食料の買い置きをしていなかったので(しとけよと言ったのにまたしげがサボったのである)、食うものがない。それで、夜中にいきなり「買い物に行く」と言い出すのだ。外はもう、ビュンビュン風が吹いているし、看板の一つや二つは飛んでそうな気配である。とても外に出せる状況ではないのだが、放っとくとしげは嵐の中に喜んで飛び出していきかねないのである。なんでそんなことをしたがるのか理解の範疇外なのだが、『八月の狂詩曲』の婆ちゃんのように何か止むに止まれぬものに駆り立てられてしまうのだろう。要するにやっぱりイカレているのである。
 だもんで、しげが起きている間中、こっちもずっとしげを見張っているしかなかった。午前三時を過ぎてようやく寝てくれたが、外を覗くと、さっきまでの雨風がウソのようにピタッと止んでいる。これなら仮にしげが置きだして買い物に出かけても大丈夫かと、ようやく寝た。でも結局、今朝は二時間しか寝ていないのである。こんなことがしょっちゅうあったら、体力持たんぞ。もう今年は台風来んでくれ。


 またもやマンガの実写映画化であるが、今度は一色まことの『花田少年史』だって。
 うーん、あまり意外性がないと言うか、ごく普通に実写になりそうと言うか、ということは原作って、絵柄の面白さはあるけれど、アイデアやストーリーは漫画特有のものじゃなかったってことだな。人気のあったマンガだとは思うけれど、何かキャッチーなものに欠ける気がする。もっともそれは「オタク的には」ということで、世間一般へのアピール度は高いのかもしれない。
 主人公の花田一路は当然子役で、須賀健太君と言うそうだ。何か聞いたことある名前だなあと思ったら、『ゴジラ FINAL WARS』で泉谷しげるの孫を演じてたあの子だわ。一路にしてはちょっと線が弱くないかなあ……って、子役の品定めまでしなくてもいい気はするが。
 でも、母ちゃんが篠原涼子で、父ちゃんが西村雅彦って聞くと、どうにもマンガのイメージと違いすぎていて、ああ、やっぱりスタッフは「原作がマンガだ」ということを気にせず映画化するんだなあと思って、ちょっと寂しくなった。一昔前だったらああいうバイタリティー溢れる日本のお母ちゃんは、藤田弓子とか京塚昌子とか市原悦子とか清川虹子とか丹下キヨ子が演じてたようなキャラである。それを篠原涼子とはねえ。それともデ・ニーロばりに太らすのか。西村雅彦も全然キャラが弱すぎるけれども、スタッフは本気でこの映画をヒットさせようって考えてるのかどうか、よく分からないキャスティングである。
 ストーリーは、「オバケの見える能力を持ってしまった一路の前に、おまえの父ちゃんは人殺しで、自分が実の父だと言うオバケの沢井(北村一輝)が現れ、真実を求めて一路は冒険に出る」というものになるらしい。そんなエピソード、原作にあったっけ? とどうにも思い出せないのだが、これがオリジナル・ストーリーだとしたら、本当に原作の設定だけを借りた、「別物」として、割り切って見るしかない、と覚悟するしかなさそうである。
 製作サイドは「和製ハリー・ポッターを目指す」と息巻いてるみたいだけど、それ、作品が全然違うでしょ(苦笑)。


 何だか最近、映画の興行収入を気にすることが多くなっているけれども、これってやっぱり昨年あたりから「オタク仕様」な映画が増えてきたせいかな。それが必ずしもムーブメントとして定着している印象がないのは、残念なんだけれども。

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09月07日(水)
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