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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■入院日記3/またヘンな夢を見た
窓の外は雪。天気予報だと、寒気はまだ続くとか。
夕べも朝まで寝つけず、結局、昼寝してしまう。こういうのが体によくないのだが、慣れるまではもうしばらく時間がかかりそうだ。
久しぶりに長編の夢を見る。
父としげの3人で、世界旅行に出ている。豪勢な話だが、その晩泊まったのは、ヨーロッパのどこか分らない小さな国の一つで、ロジェ・ヴァディムの『血とバラ』に出て来るような古い、廃墟のような屋敷であった。でも中はなぜか日本間である。
二階に上がって、部屋に通されると、そこには相部屋の先客がいた。高校受験にやってきた母親と娘二人の三人である。ヨーロッパでどうして日本人が高校受験、という疑問は当然夢だから浮かばない。足下には客用一人一人にテレビとビデオが設置されていて、私はその受験するというお姉さんのために、よい映画を見せてやろうと思いたち、レンタルビデオ屋に走っていって、ウッディ・アレンの『カメレオンマン』を借りてくるのである。なんでそんなものを、と理由を聞かれても困るのだが、その時の私は「これが受験の役に立つ!」と思いこんでいたのだから仕方がない。
もう夜も更けて、みな蒲団を敷いて寝床に入っているというのに、私はわざわざそのお姉さんの足元のテレビにビデオを入れて、『カメレオンマン』を再生させ始めた。「面白いですよ、これ」と言いながら。お姉さんは黙っているが、見るからに迷惑そうな顔をしている。私は内心、「一度見出したらきっと面白くて気分がハレバレするにちがいない」とか勝手に思っていて、映画を見せ続けるのだが、これがどういうわけか全然面白くならない。というより、中身が『カメレオンマン』ではなくて、全く別のドキュメンタリーだったのである。
お姉さんは俯いてしまっているし、私は居たたまれなくなって、寝たふりをすることにした。するとやがて妹が起き出してきて、テレビを切ってしまった。「なに考えてるの、こいつ」。妹の毒づく声が聞こえたが、全くその通りである。
母娘は部屋にいることすら憚られたのか、突然蒲団から抜け出して外に出ていった。こんな夜中にどうしてだろうと訝しく思って窓から中庭を覗くと、そこに礼拝堂があって、母娘を含めてたくさんの人が行列を作って中に入って行く。ヨーロッパだから仕方ないよな、と思いながら何だか妖しいムードなので、父としげを起こして宿を発とうとしたが、空港からの連絡で、飛行機が誰かに勝手にキャンセルされてしまっているとのこと。
「そんな、困りますよ、三席ちゃんと用意してくださいよ」と空港に電話で文句を言うが「ないものはない」の一点張り。しげは「だからあんたと旅行に行きたくないんよ」と文句タラタラである。どうして私のせいになるのだ。
仕方なく、飛行機は諦めて列車で帰ることにした。家までは15時間もかかってしまったが、目覚めて考えてみたら、ヨーロッパまで列車で15時間ならすごく近かったんじゃなかろうか。夢ってホントにヘンである。
咳が相変わらず止まらないので、看護師さんにお願いして、イソジンを頂く。病室内の洗面所でうがいをしていると、例の向かいのベッドの人が、「飴を差し上げましょうか?」と言ってきた。「うがい薬を頂きましたから、大丈夫です」と断ったのだが、席を外しているときに、20個近くものど飴が机の上に置いてあった。
「いや、こんなにたくさん……」
お節介な人なのだろうか。喋ってる言葉を聞くと、イントネーションが関西である。心からの親切なのか、やっぱり「うがいの音がうるさい」という謂なのか、判別に苦しむ。
「ノンシュガーですから嘗めても大丈夫ですよ」と仰るが、ノンシュガーでも甘味のあるものは血糖値が上がるのである。かといって今更突っ返すわけにもいかず、ありがとうございます、と頭を下げたが、ちょっと一緒に居難い感じの人である。
糖尿病教室は食事療法について。
先生が随分若そうな女の子(と言いたいくらいに若い。見た目が10代なのである)で、どうも栄養士になりたてらしくて、説明の仕方がたどたどしくて分りにくい。
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02月04日(水)
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