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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■水がまた来る/『さちことねこさま』1巻(唐沢なをき)
午後から半日だけの出張である。
出張先、自宅から一本道なのだが、なぜかバスが通っていない。福岡というところは博多、天神間の交通の便ばかり考えられていて、他の地域は殆ど田舎同然である。亡き母は「福岡って田舎ですねえ」と遠方からの客に言われたときに烈火のごとく怒っていたが(言う客も客だが、怒る方もちょっとなあ)、実際、バス路線の不便さを考えるとそれも否定はできない。
言っちゃなんだが、福岡市とその周辺でせいぜい「街」と言えるのは「博多」と「天神」くらいしかない。あとはホークスタウンができてからの「百道」かねえ。言われて嬉しかないだろうが、他地区はやっぱり、軒並み「田舎」なんである。
粕屋とか箱崎とか香椎とかもねえ、いろんな建物おっ立てて「街」を活性化させようと頑張ってるけど、たいていの買い物、「博多」と「天神」で賄えちゃうから、近隣の客以外、そこまで遠出して買い物する必要ないんだよねえ。『エクセルサーガ』に某デパートが閉店するネタがあったけど、事実だからなあ、アレ(^_^;)。
久山なんか、昔はアスレチッククラブしかなかった山ん中に映画館だのスーパー銭湯だの市場だの作って、でもやっぱりなにか「目玉」になるものに欠けてる印象が強い。たまに行くたび、本当にたまたまなのかもしれないけれど、店内がガランとしてるの見ると、大丈夫かなあ、と心配になるのだ(もっと心配なのは博多リバレインだけど)。
もっともそんなふうに「適度に寂れて」いるおかげで、粕屋のワーナーマイカルとか久山のヴァージンシネマズとか、映画館は空いていてありがたい。喜んじゃいかんか。
その逆に天神東宝やAMCキャナルシティは、いつ行っても混んでいる。だもんで、最近そこでしか見られないって映画がかかってない限りは、とんと足が遠のいてしまった。ポイントカードが溜まってて、タダ券使わないともったいないんだが。
短く書かなきゃと思いつつ、また余計な話をしているが、つまり、「出張先まで交通機関がない」ということなのである。
で、夕方から仕事があるしげにムリヤリ頼みこんで、送り迎えをしてもらう。タクシー代を払うほどの余裕はもう今月はないのだ(T∇T)。
出張仕事、予定時間が少し遅れて、表に出たときにはもう5時。
外では新車に乗ったしげが、仕事に間に合うかどうか、イライラして待っていた。慌てて謝りながら車に乗った途端、稲光とともに豪雨に見舞われた。いやもう、あっという間に道が水没していく。
「こないだの水害のときみたいに、駐車場、水にしずまんかなあ」
「すぐ仕事に行くんやろ? 仕事先は水、大丈夫なん?」
「高くなってるから、あそこは大丈夫」
「だったら、仕事が終わっても、そこに置いたままにしといて歩いて帰ってくればいいやん。また迎えに行ってもいいし」
「最悪の場合、そうするけど……」
しげはそれでも不安そうである。
マンションの駐車場に到着した時点では、まだ一階のピロティは無事であった。就業時間が迫っているしげは、慌てていったん汗を流そうと風呂に入る。で、着替え始めるまでほんの20分ほど。いきなり玄関のホーンが鳴って、ご近所さんの顔が画面に映しだされた。
「はい、何でしょう?」
「藤原さん! 車が沈みようですよ!」
「えええええっ!」
慌ててパンツのまま(本当に驚いていたのである)、ベランダに飛び出したら、まさしく先日の悪夢の風景が再現されようとしているさ中であった。
轟々と流れてくる茶色い濁流が、今にも新車のタイヤをその下に隠そうとしている。
部屋に戻るやいなや、しげに向かって「急げ! もう大分沈んどう!」と叫ぶ。しげも血相変えて玄関から飛び出す。すれ違いざまぶつかりそうになるがお違い怒鳴りあってる余裕はない。やっぱりパンツのまま、ベランダから下の様子を覗いていると、しげ、水の中をジャブジャブと車まで辿りつき、そのまま濁流のの中を進んでいった。一応、こないだのように座席まで水が入りこむということはなかったようだが、これでまた新車がオシャカになっちまったら、泣くに泣けない。
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08月11日(月)
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