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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■新車の名前はまだない。/DVD『諫山節考』/『低俗霊DAYDREAM』5巻(奥瀬サキ・目黒三吉)ほか
 車がないので、朝まだ暗い時間帯に、しげはてくてく「チカンさんいらっしゃい」な小路を帰ってこなければならない。
 一応、私はしげの夫であるから、まあほたらかしとくわけにもいくまいと、朝の3時過ぎにしげのバイト先まで迎えに行くことにしていた。
 そこまではまあ、よかったのだが、帰り道、些細なことでまたしげとケンカになってしまった。きっかけは「しげが曲がり角を間違えた」(私は夜目が利かないので、しげを頼りにしていたのである)という単純なことだったのだが、しげが開きなおって「アンタがどのくらい目が見えんかなんてわかるわけないやん!」と言い放ったもんだから、私も「ふざけんな!」と激昂しちゃったのである。
 最終的にしげが謝るまで、また半日かかってしまったが、しょっちゅう私に甘えてくるクセに、こちらの身の上を何も考えないというのは、本気で疲れるのである。
 日記の更新なども頑張ってしようと思っていたのに、すっかりくじけて夕方まで寝る。ああ、せっかくの休みがこんなツマランことでムダに……(T∇T)。


 で、私が寝ている間に、しげの新車が届いた模様。
 さっきまで叱られてベソかいてたしげは打って変わって有頂天。喉元過ぎればなんとやらと言うが、こんなに簡単に過去のことを忘れられる才能が羨ましい。実際、人生に悩みなんてないんだよなあ、こいつ(しげにとっては「今晩の晩飯」以上に悩む材料はないのである)。

 新しい車は、グレーだか銀色の軽である。
 車に興味が全くないので、車種はよく知らんのだが、買った会社を聞いてみると、なんと親の知り合いのところであった。
 それ先に聞いてたら、少しは安くしてもらえたかもなあ、と、一瞬思ったけれど、あまりそういう「特典」を頂くのも好きではない。真っ正直にローンを払うほうが気持ちいいからまあいいか。
 私が寝てる間に、しげ、試運転をしてきたらしく、「広くなって、乗り心地いいよ!」と超ゴキゲン(×3)。
 午前中叱り疲れて腹が相当に減っていたので、早速新車に乗って「しーじゃっく」まで。夏の企画のエビ天寿司など、安い寿司をたらふく。
 そのあと、「ヤマダ電器」で、しげのポイントカードを使って(パソコン買った時に1万円以上溜まっていたのである)、DVD‐Rを買いこみ。さらに「ブックセンターほんだ」で、買い損ねてたマンガをしこたま買う。
 水害からこっち、出歩く足がないと、ホントに買い物が減るのだということを実感した日々であった。

 
 DVD『諫山節考』。
 蛭子能収第1回監督作品。所詮イロもの監督の余技とか軽く考えてる人がいたら、ちょっとニイさん、そりゃあ心得違いってもんだよ。
 文芸でも映像でも、何十年も作品を作って来た超ベテランより、ポット出の新人の作品のほうが遥かにみずみずしく面白い、という例はいくらでもあるのだ。「映画は私の30年来の夢だった」というのは、仮にも監督やろうって人間が口にしちゃあ、かえって陳腐でこっぱずかしくなるセリフだし、テレビのバラエティ番組に出ている時の蛭子さんしか知らなければ、これを聞いて笑う人もいるだろう。けれど、実際に作られた映画を見ていただきたいのだ。

 田中良夫(ベンガル)はごく普通のサラリーマン、今日も便器のセールスに励んでいたが、飛びこみで入ったある会社で、“謎の言葉”を聞く。それどころか、その日を境に、彼の妻、保子(伊佐山ひろ子)も、部下の山本(神戸浩)も、“謎の言葉”を口にし始める。田中の回りで、何かが確実に歪み始めていた……。

 短編映画は、その短さゆえにアイデア一発勝負の要素が強く、ともすればイメージ映像ばかりの不条理劇に逃げがちだ。石井聰五なんて、一時期そんな映画ばっか撮ってて、いささか閉口させられたものだった。凡庸な監督がたいてい勘違いをしていることは、不条理と言うのはただデタラメをやりゃいいってもんではなく、我々の世界とは別の論理によって成り立っている世界を構築しなければならない点に気づいてないことである。

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08月08日(金)
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