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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ちくしょう、目医者ばかりではないか/北村薫サイン会/『とんち探偵一休さん 謎解き道中』(鯨統一郎)ほか
 目の中のぶら下がった輪っか、ふと、これってあの「玩具の輪っか入れ」に似てるなあ、と思った。名前が何ていうのか知らないけど、透明なガラスケースの中に水を満たされてて、中央には棒が立っている。で、棒の周辺には小さな輪っかが散らばってるんだけれど、ボタンを押すと水圧で輪っかがふわっと浮く。
 ボタンの押し加減で、輪の浮かび方が変化するので、うまく棒に入れられたらご立派、ってやつね。
 ただ、私の目の中に棒はないので、この輪っか、どこかに引っ掛けとくというわけにはいかないのである。

 眼科にはしげに車で送ってもらう予定だったが、何だかまた「寝つけなかった」しげは起きて来ない。これが、私の身を心配して寝つけなかった、というのなら可愛いものなのだが、もともと今日は一緒に映画に行こうと約束していたので、ドキドキしていただけであろう。

 そぼ降る雨の中、バスに乗って、かかりつけの眼科まで。
 ついこの間、来たばかりなので、受け付けの女性の看護師さんも、やや怪訝な顔をしている。
 「あの、目の中に紐が垂れ下がっててブラブラ揺れ出したんですけれど」と説明をする。なんだかこの説明だけを聞いていると、まるで楽しいことが起こったみたいで全然切迫感がないが、何と言ったらいいのか、ほかに言い方を思いつかん。
 それでは、ということで眼底検査。今日は両目とも瞳孔を開かれてしまうと、道も歩けなくなってしまうので、異状のある右目だけにしてもらう。前回も目薬の効きは悪かったが、今日も20分程度ではなかなか開かない。追加に次ぐ追加で、何だかたっぷりと目薬を差されるが、何だか目玉が浮いてきそうだ。
 30分以上待たされて、ようやく主治医に観察してもらう。
 こないだは書き忘れたが、この眼科医さん、メガネをかけてヒゲを生やした細面な方で、マンガ家のいしかわじゅんにちょっと似ている。ただ雰囲気はいしかわさんほど胡散臭くはないし、声もずっといい(^o^)。
 またまた「右見て左見て上見て下見て」と指示されて、目をキョトキョト動かす。なんかこんな風に目がグルグル回るブリキの人形が昔あった気がするが。お眠りリカちゃんは目を閉じるだけだったかな。
 「ああ、網膜が剥がれてますねえ」
 「はあ」
 こないだは大丈夫ですよ、とか言ってたのに、いきなりこれである。
 「穴が開いてますよ」
 「穴ですか」
 何だか「穴」なんて言われちゃうと、眼球のてっぺんにぽっかり黒々と穴が開いてて、そこから「おーい、でてこーい」とか呼ばれそうなイメージなのだが。紐は向こうの世界にいる人が垂らしてるのだな。
 「糖尿病のせいでしょうか」
 「いや、これは強度の近視によるものです」
 私の近視は生まれつきなので、つまりこれは母の遺伝によるものだ。母が生きてたら、自分の罪のように感じて落ちこんでたことだろう。糖尿病のせいだとこれは父の遺伝ということになる。どっちにしたって、目が悪くなる運命にあるのだな、私は(^_^;)。
 主治医がいろいろ状況を説明してくれる。
 近視が進行して、眼球の中の硝子体(しょうしたい)が歪み、ついには後部硝子体膜が網膜から剥がれてしまう(後部硝子体剥離)。そのときに、網膜に穴が開き(網膜裂孔)、その穴を中心に網膜が下の層から剥がれて硝子の方へ浮き出す(網膜剥離)。紐はやはり硝子体の中の「濁り」で、血管ではないそうだ。
 これを放っておくと、視野が下の方から黒々と影が上ってくるように狭くなって、失明にいたるということである。
 治療方法は、レーザー光線で裂孔の周囲を焼き固め(光凝固法)、それ以上の剥離への進行を予防する、とのことだが、一回見え始めたこの「濁り」はもう消えないらしい。
 「とりあえず、レーザー治療をしてみようと思いますが、よろしいですか?」
 よろしいも何も選択の余地はないよな。
 「費用が○万円ほどかかるんですが」
 あう( ̄∇ ̄ ;)。
 四捨五入したらフタケタになるではないの。
 イタイ、それはイタ過ぎる。
 「すみません、ちょっと今日はそこまで用意してきてないんですが」
 「いいですよ、月曜日にまた来てもらいますから、そのときに一緒に」
 「……それはどういう……?」

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06月28日(土)
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