ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491706hit]

■ミスキャストの楽しみ方/『耳のこり』(ナンシー関)
 ウチから遠いんでたまにしか出かけないんだけれど、百道にある福岡市総合図書館、ここって結構スゴイとこなんである。
 今ここは、2万本を保存できる収蔵庫を設けて、アジア映画や日本映画などのフィルムの収集、保存事業を進めているのだけれど、そのことを知った俳優の高倉健が共感して、なんと自分の出演の記念として映画会社から買い取っていた43作品の16ミリフィルムを寄託したのだ。意外と知られてないけど、高倉健って福岡の出身なんだよ。網走じゃなくて(^o^)。
 そのことを受けて、福岡市の山崎広太郎市長は、昨日の定例会見で、来年1月から3回にわたり、「高倉健映画祭」を開催すると発表。一俳優のみをクローズアップして、これほどの規模の映画祭を実施するってのも日本じゃ結構珍しいんじゃなかろうか。
 実は私はこの映画祭にすっごーく期待しているのである。いや、高倉健のファンってわけじゃないよ。どっちかっつーと嫌いなくらいなんで(念のために言っておくが本人がではなくて、そのヘタクソな演技がである)。
 じゃあ、何に期待してるかって言うと、上映予定の35本の中に、金田一耕助シリーズの『悪魔の手毬唄』が含まれてないか、ってことなのね。
 昭和50年から始まった横溝正史ブーム、高林陽一監督・中尾彬主演の『本陣殺人事件』、市川崑監督・石坂浩二主演の『犬神家の一族』、野村芳太郎監督・渥美清主演の『八つ墓村』と、立て続けにその代表作が映画化されていったのだが、それ以前に横溝正史作品の映像化がなされなかったわけではない。
 それまでは原作発表の直後に映画化されることが圧倒的に多く、東横(東映)で松田定次監督・片岡千恵蔵主演の『三本指の男(本陣)』『獄門島(前後編)』『八つ墓村』『犬神家の謎・悪魔は踊る』『悪魔が来りて笛を吹く』『三つ首塔』の七本が制作された。私はこのうちの『獄門島』と『三つ首塔』を見ているが、中見はまあ、探偵映画と言うよりは現代版遠山の金さんである。洋装の金田一は原作の金田一のイメージとは似ても似つかないと評されがちだが、さすがは名優片岡千恵蔵、キメの時代劇調ケレン味たっぷりの演技はともかくとして、普段は知的で落ちついた、探偵らしい演技を披露している。
 その間、他社も岡譲司・河津清三郎・池部良らを金田一耕助に配して映像化していったのだが、本家本元、東映は片岡千恵蔵の老齢化に伴い、新金田一耕助の白羽の矢を誰に立てるかを模索していた。
 で、東映金田一耕助シリーズ最終作の金田一に扮したのが当時はド新人の高倉健だったのである。今でも高倉健はホントに芝居がヘタなんだが、当時、今にも増してどれだけひどかったかは、その数年後に主演した『飢餓海峡』ですら、内田吐夢監督がそのへぼい演技に何度も激昂したというエピソードにも表れている。確かに『飢餓海峡』の高倉健はただのチンピラだ。刑事のムードがまるで出ていないが、私はギリギリ「本物の刑事ってチンピラっぽいのかも」と自分を騙して見ることにしている(^^)。
 片岡千恵蔵版の金田一シリーズはたまにテレビに流れることもあるのだが、高倉健の『悪魔の手毬唄』は今まで一度も見る機会がなかった。もちろんビデオ化もされていない。聞けば、原作の連載途中で映画制作が決まったので、原作を使ったのは冒頭の部分のみ、ストーリーは全く別ものだという。千恵蔵のあとをうけて、プレッシャーから高倉健がどんなに右往左往しているかを確かめてみたいというイジワルな楽しみもあるが、何より、その「改変」がどんなものか見てみたいのである。
 残念ながら、1月のラインナップに『手毬唄』は含まれていない。2月以降にも果たして上映されるかどうかは定かではない。『網走番外地』以前の主演作品については高倉健自身、記憶から消したいだろうから、寄贈作品の中に入ってないこと自体考えられるのだが、私ゃ今さら『幸福の黄色いハンカチ』なんかにゃ興味ないのよ。
 黄金期の日本映画がゴミのような無数のプログラムピクチュアによって支えられていた事実を認識するためにも、名作(と言うほどのものって高倉健作品には少ないけど)偏重のラインナップじゃなくて、珍品を混ぜて上映してほしいんだけれど、難しいかなあ。
 『手毬唄』以外にも『ギャング忠臣蔵』とか見たいんだけどね。


[5]続きを読む

12月11日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る