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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■癒してくれなくていいってば/映画『怪盗ジゴマ 音楽編』/『夏のロケット』(川端裕人)ほか
 朝方、寝床の方からヘンな呻き声が聞こえる。
 なんとなくリズムはダース・ヴェーダーの「すーぱー・すーぱー」(私にはそう聞こえるんですけれど、みなさんにはどう聞こえてますか?)に似ている。しかし朝目覚めてみたら側にダース・ヴェーダーが寝てたって、こんなにエズイ(=怖い)ことはないな。
 そんな声を出すのはもちろんしげ以外にはいないのだが、いったい何を言ってるんだと思って耳を傾けてみると、「すーぱー」ではなくて、「はーげー。はーげー」。
 ……誰がハゲやねん!
 そりゃな、確かに最近、天頂あたりが薄いよ。抜け毛も多いし、だんだん額も後退してきてるし、髪の毛自体も細くなってきてるよ。こないだ散髪したときにオヤジから「オレそっくりの頭になってきたなあ♪」なんて言われちゃったよ(そんなとこまでムスコが似てきたのが嬉しいか、父よ)。
 けどなけどな、「まだ」ハゲちゃいないんだよ。
 谷村新司にもさだまさしにもなっちゃいないんだよ。
 いや、ハゲになったっていいじゃん。ハゲのどこがいかんのよ。ハゲが魅力的だった人たちだって、今までにたくさんいたぞ。ユル・ブリンナーの立場はどうなる。島田勘兵衛(←『七人の侍』)はあえてハゲになったぞ。宇宙刑事ギャバンだって一時期はハゲだったのだ。コペンハーゲンは立派な都市じゃないか(意味不明)。
 くそ、今度はしげが起きてるときにしげのことを○○○○とか○○○○○とか○○○○○○って寝言言ってやる。


 今日も今日とて、しげに車で職場まで迎えに来てもらう日々。
 これが職場の同僚に羨ましがられることが多いんだけども、困ったことに、「私に視力がないから車の免許取れないんですよ」とか「以前、自転車で子供ハネちゃったもので、通勤に自転車使いづらくなっちゃって」とか、正直に事情を話すと、たいてい相手が「引く」ことである。
 軽い会話を楽しむつもりがいきなり重くなったと感じるんだろうけれども、私ゃ別に重い話題を振ったつもりはないんだけどなあ。

 病人が病気なのは実はカラダだけではなく、ココロが病気って場合がほとんどなので、だからこそ周囲の人間は病人を「気」遣ってしまうのである。重病患者に「オレはもうすぐ死ぬんだ」とか沈鬱な表情で言われたら、たとえ家族だって声のかけようもないだろう。「オレ、もうすぐ死ぬけどそれまで精一杯生きるよ!」と言ってくれりゃ、「その意気で頑張れ!」ってエールを送ることもできるんだけどね。でもそういう覚悟ができてる病人は少ない。たいていは内心どこかで同情を買いたがってるからねえ。

 私にしたところで、病気だのケガだので余命いくばくもないと医者に言われてから既に30年が経っているが(^_^;)、自分で自分の病気を吹聴するのは「これが『憎まれっ子世に憚る』ってことか」、と笑ってもらえりゃいいと思っているからなんである。同情はしなくていいし、惜しまれるだけの価値のある人間でもないから、実は激励だって要らない。
 世の中、苦労してない人間なんていないのだから、病気だからって他人と比べで自分は不幸だなんて悲観するこたあないのだ。「なんでオレだけこんな目に」ってブルース・ウィリスみたいなこと言ってるからかえって落ちこんでしまう。その「オレだけ」ってのが傲慢というものなのである。周囲も遠慮は要らないから「別にアンタだけが苦労してるわけじゃないよ」って言ってやれや。
 他人より早死にする人間だって、いくらでもいるんだから、死期が迫れば「ここまでってことか。まあ、自分なりによくやったほうかな」と本人が素直に諦めりゃすむことなんである。

 私の言質に周囲が引いちゃうのも、「そんな強がり言ってるけれど、本当は心の奥底ではツライに違いない」と勝手に憶測して対応に困ってるせいなんだろうね。かと言って、私が「ホントはつらくてつらくてたまらないんです、ボクはこれからどうなってしまうんでしょう」なんて言ったら、そっちの方がどんな態度を取ったらいいかすっごく困っちゃうと思うんですが、いかがですか(誰に向かって言っとんの)。

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06月20日(木)
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