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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■多分、しょっちゅう見ている夢/『おせん』其之三(きくち正太)/『END ZONE』1巻(えんどコイチ)ほか
 夜中の3時、ちょっと催してトイレに行く。
 いきなりしげが「起きたん?」と聞いてくる。
 体が起きてるだけで、覚醒しているわけではない。気分的には、トイレから帰ってきたら、また寝たいのだ。
 「なんだよ、オレ、トイレだよ」
 「帰ってきてからでいいから、背中押して? 痛いとよ」
 「しらねーよ、帰って来たら寝るよ。眠いんだよ」
 「お願い、約束したよ」
 「返事してねーだろ、勝手に約束するな!」
 なんか知らんがしげの背中のホネはしょっちゅうズレるんである。
 整体に行っても完治しない。いったんは元に戻ってもすぐにずれる。
 しょうがなく、時々私がしげの背中に乗って、平手で押して戻してやってるのだ。
 右の手首と左の手首を合わせ、掌を蓮の葉のように広げて、背骨の両側に広がるように当てて、グイと押す。
 そうすると、パキ、と音がして、ホネが元に戻るのである。
 「ああ、背中が軽くなった!」
 と、しげは喜ぶのだが、たいてい、私への報酬はない。
 常日頃、自分が何か頼まれたときにはお駄賃求めたり求めなくても勝手に取っていったりしてるのに、理不尽だ不公平だと思っていたのだ。
 その上、今日の私は寝惚けている。
 「早く早くぅ、上に乗って?」
 聞きようによってはすげースケベなセリフだが、もうこちらは乗れと言われりゃ乗ってやろうじゃないか、このクソ野郎ってな気分である。
 いつもは体重を乗せて押すようなことはもちろんしない。
 しかし、今日は思いきり、両掌にチカラをこめ、波動拳を放つがごとく。
 「破ッ!」
 「うっ!」
 なんか私の下で動かなくなった生き物がいるがよく知らん。 
 あとはまた寝た。
 多分、今まで書いたことも全部夢だろう。
 

 こんな夢を見た。 
 マンションの屋上に長屋があって、そこの真ん中の部屋に住んでいる。
 しかし、ベランダの向こうはずっと砂浜だ。
 屋上じゃなかったのか、ここは、と夢の中の私も疑問に思っている。
 どこぞのジジイがしょっちゅう、洗濯物を干しに砂浜に来ている。
 部屋の中を覗かれちゃ困るので、カーテンはいつも締めっぱなしだ。
 夢を見ながら、こんな夢を見ているとは、いったい私はどんな精神状態にあるんだろうと訝んでいる。
 あとでこの夢を誰かに分析してもらうために、ちゃんと忘れないようにしておかなければいけないと、部屋の隅に膝を抱いてうずくまって、一生懸命、呪文のように唱え始める。
 「砂浜にジジイ、砂浜にジジイ、砂浜にジジイ」

 こうまでして、夢を記憶したのだ。誰か分析してくれ。

 朝になって目覚めると、しげ、ぐっすり寝ている。
 「ほら、職場まで送っていってくれ」
 とつついても蹴飛ばしてもピクリとも動かない。
 夕べ、何か疲れることでもあったのだろうか。
 仕方なく、タクシーを拾って出かける。
 夕方までにはいくらなんでも目覚めるだろう。


 児童文学者・作家の上野瞭さん、27日に胆管がんで死去。73歳。
 記憶喪失の猫、ヨゴロウザと仲間たちの、野良犬たちとの攻防戦。
 理想の家族を演じることに堪えられずにホームレスになっていったお父さん。
 前者は『ひげよ、さらば』。NHKで連続人形劇にもなった。
 後者は『砂の上のロビンソン』。ドラマ化、映画化されて、そのお父さんの役を、テレビでは田中邦衛が、映画では大地康雄が演じていた。
 多分、上野瞭さんをご存知の方はこの二作と思い出が直結している人が多いのではないかと思う。
 もちろんこの二作を称賛するに言を待つものではないが、私が上野さんを知ったのはこの二作が発表される以前のことだった。
 あれからもう、20数年。

 『上野瞭ってひとの本、読んだんだけど、おもしろいね』
 『先輩も、読んだんですか? 面白かったでしょう!!』

 彼女とは、偶然同じ本を読み、同じようにおもしろがるということがままあった。それが何となく二人の仲を運命づけているように感じていたのも若さゆえのこと。

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01月28日(月)
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