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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■それはそれ!/『ゲッベルスの贈り物』(藤岡真)ほか
 オタアミ当日まであと43日! 43日しかないのだ!


 朝方、随分涼しくなっているのだけれど、日中、陽射しが指すとじんわり汗ばむ日が続く。
 今日、やっとワイシャツを長袖にしてみたのだけれど、暑い暑い。明日からまた半袖に戻そうと決意。
 

 仕事が忙しいので、無理やり息抜きの時間を作って本を読む。
 こういう時ほど本がどんどん読めてしまうのはなぜだろう。時間がゆっくりある時にはたいてい居眠りしちゃうのに。

 藤岡真『ゲッベルスの贈り物』(創元推理文庫・672円)。
 創元推理文庫が、90年代に入って才能のある新人さんをどんどん発掘してくれてるのはミステリファンとして単純に嬉しく思う。
 先日読んだ青井夏海の『虹の事件簿』も面白かったし。
 この藤岡真のデビュー作も、1993年に一端発表されてすぐ絶版になったものだとか。こういう「幻の」ってヤツは当然「幻」になるだけの理由があるわけで、傑作か超駄作かそれを確かめてやろうって思うだけでもココロがワクワクしてくる。
 著者は博報堂に勤めてて、VOW者でもあるそうで(^o^)、いかにも「怪作」っぽい気配だ。
 タイトル見ると、何かスパイものか何かかなんて思っちゃうでしょ?

 実際、物語は、ドイツ降伏、ヒトラー自殺直後のUボートの中から始まる。海軍大佐、飛良泉英雄に与えられた最後の任務は、最終兵器、コードネーム「ゲッペルスの贈り物」を日本に届けること……。
 でも次の章で、おハナシはいきなり現代日本に飛ぶ。
 人気俳優、剣城直樹が、その秘密の恋人、真弓にビルの28階から突き落とされ殺される。
 更に次の章、人気爆発中の謎の女性アイドル、「ドミノ」の正体を探るように命令されたプロデューサー、藤岡真のところに真贋いずれとも判別し難い情報が次々にもたらされる。
 メディアにビデオテープのみが送りつけられ、一切姿を現さない「ドミノ」とはいったいナニモノなのか?

 ……どうですか?
 三つの、何の関わりもなさそうな出来事が段々一つに収束していく……ミステリーではよく使われる手ですね。既に最初の3章で、トリックは仕掛けられています。
 多分、ミステリを読みなれてない人は引っかかっちゃうんじゃないかなあ、と思いますが、先にちょっとご注意申し上げておいた方がいいでしょう。

 この作品に散りばめられたトリックは、どれもこれも、「かなり」インチキです。

 っつーか、トリックのためのトリックであって、必然性がない。マジメなミステリファンなら絶対怒るだろうなあ。

 ミステリの「アンフェア論争」は、クリスティの『アクロイド殺し』以来、様々な作品で論議されてきたことだけど、たいていそこで問題になったのは「叙述のトリック」、つまり犯人ではなく「作者」が読者にトリックをしかけてもいいものかどうか、ということだった。
 私は基本的にそれは構わない、と思っている。つまり、作者が読者にトリックを仕掛けなければならない必然性があった場合だ。
 そう考えると、『アクロイド』には「アンフェア」な部分などこれっぽっちもない。
 横溝正史の『本陣殺人事件』は、叙述のトリックを仕掛けないと、犯人の仕掛けたトリックまで露見してしまう危険性があった。これも「必然性」があったと言えよう。
 しかるに、この『ゲッベルス』には、それが全くないのだ。あるのは、作者の「意表をつきたい」願望があるばかり。これじゃとてもミステリとは言えない。これはただの「イタズラ本」だ。
 だから、最初の一章で、「これは作者にマトモなミステリを書く気がないな」と気付いてしまえば、後は殆どのトリックが芋づる式に露見するようになっている。

 ……もう、ある程度ネタバラシしちゃうけどね、いきなり「ゲッベルスの贈り物」なんてもの大仰に持ち出してきて、そしてその正体を明記しない、なんて、これで「謎」を提出した気になってるのがちゃんちゃらオカシイのだ。
 そんなもの存在しないに決まってるじゃないか。
 そんな最終兵器が実在してるんなら、どうしてドイツは自分たちでそれを使わなかったのだ。

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10月12日(金)
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