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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■オタクな××話/『こんな料理に男はまいる。』(大竹まこと)ほか
 七夕だけど、小雨がチラホラ。
 今年も織姫は涙にくれていよう。
 ……いや、お姫様、一年に一度会えるか会えないか、なんてアテにならない相手よりも、このボクの熱い、燃えるハートに触れも見でさびしからすやウヒウヒウヒ、というのは椎名高志のギャグ。
 どういうわけだかウチの職場にも竹笹が飾ってあって、「有久さんも短冊を」といわれたので、つい、「妻が料理を作ってくれるようになりますように」と書きこんでしまった。
 私はいったい何を夢を見ているんだろうね。

 大竹まこと『こんな料理で男はまいる。』を読みながら、まあ、このレシピを読みながら料理を作るような女はやっぱりバカな女だろうな、などと不遜なことを思う。レシピに頼らず、自分の目の前にいる男が何を求めているか、それを見ぬいて料理を作る。そんな難しいこと出来ない、と文句を言うようなら「男と一緒にいる」意味はない。「私だけを見つめてほしい」と女が男に望むのなら、女も男のためだけの料理を作れなくてどうするのだ。
 もちろん、私がしげに作る料理はしげのためだけの料理である。しかし、しげが私のために作る料理はそうではない。しげ自身の料理でしかない。

 私の知り合いの女性で、花嫁修業で料理学校にさくさく通い、いざ結婚後は存分にその腕を振るって、毎日毎日ビーフストロガノフノフホフとか舌平目のムニムニエルとか、そんなもんを作り続けたけれど、夫はだんだん料理を食べ残すようになり、更には家計も逼迫しだして、一時期、離婚の危機に陥った、という人がいる。
 ちょうどそのころ、その女性は私に「あなたと結婚すればよかったかしら」などと、その気もねーくせに私をダシにして自分の正当性を訴えたりもしていたのたが、なんか男を徹底的にナメてくれる女だなあ、と内心立腹していたのである。
 私なら女の作る料理を喜んで食べてくれるだろう、というふうに思われていたのだろうが、私だって、そんなケッタイなものを毎日食べたいとは思わない。
 大竹さんもこの本の中で書いているように、男が女に求めるのは、「安い食材で、定まった普通の味で、工夫のあとを見せずに」「ほっとできるような、温かくてしみるような味を一緒に味わいたい」。
 それだけなのだ。
 「私はあなたのためにこれだけのことをしてるのよ」なんて料理は嫌われるだけだ。かと言って「こんなもんでいいだろう」なんて手抜きがミエミエの料理も願い下げである。
 月並みだが、男に対する思いやりが感じられる料理。
 それだけで充分なのだ。同じ料理でも盛り付けにちょっと工夫をするとか、それだけでも男は嬉しいのである。
 なのに、その程度のことすらしない女は多い。それが男への思いやりになるってことになぜ女は気づかないか。
 実は女は、男に料理を作ってやる時、愛を注いでいるように見えて、逆に男に甘えているのである。本人は男に尽くしているつもりでも、実は男の愛情にしなだれかかっているだけなのである。そんな女は、男の心を読むこと自体しようとしない。ただただ自分の愛情を押しつけて、それを受け入れない男を恨むばかりである。
 「美味しい料理作ってあげるね」なんて言われて喜んでちゃ男のほうもバカだ。そういう女の料理はたとえ美味くても不味いのだ。

 私も結婚して10年になるが、しげに美味しい料理を作ってもらったことは一度もない。初め美味しくても、あとで必ずしげが「美味しくない?」と聞いてぶち壊すのである。「不味いか?」と聞かれれば、「そんなことはないよ」と答えざるをえない。そう答えることを強要されて美味しく味わえるはずがない。だから、「そのヒトコトを言わなければ美味いのに」と何度もしげには叱ったのだ。なのに何度も聞くものだから、私は結局返事をしなくなった。そうしたらしげは料理自体、全く作らなくなった。
 
 私はしげに料理を作ってもらうために結婚したわけではないので、それはそれで仕方がないことではあるのだが、それにしても10年間マトモな料理を一度も作れなかったというのはバカにもほどがある。

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07月07日(土)
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