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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ちくしょう、目医者ばかりではないか/北村薫サイン会/『とんち探偵一休さん 謎解き道中』(鯨統一郎)ほか
 グータロウ君の息子さんは、日々着実にオタク道を歩いて行ってるようである。偶然にも、息子さんの学校の、担任の先生がまた、ウルトラマンなんかのファンだそうで、随分話が合うらしい。
 先生が「『ウルトラQ』の中では、おれはケムール人が好きだな」とか言うと、息子さん、「ボクはパゴスです!」と答えたとか。パゴスとは渋い。ここで「実はあのキグルミはバラゴンを改造したものでね、更に、ネロンガ、ガボラと改造を続けられて……」とか、他人が聞いたら鼻白むようなウンチクを言い出すようになればもう、一人前であろう(^o^)。
 ……ホントにそんなオトナに子供を育てたいのかな、グータロウくん。
 知ーらないっと♪


 鯨統一郎『とんち探偵一休さん 謎解き道中』(祥伝社/ノン・ノベル・840円)。
 なんとサイン本である。クジラマークがやたら可愛い(^o^)。
 気がつかないうちに福岡でサイン会してたんだな、鯨さん。どんなお顔か、拝見してみたかった。ペンネームからの勝手なイメージ、和田慎二なんだけど、シツレイかな(^_^;)。
 本作は『金閣寺に密室』に続く『一休さん』シリーズ第2弾。相変わらずタイトルセンスは無いに等しいけれど、ミステリ短編集としては高水準。長編だった前作よりも楽しめた。
 前作のラストで、茜の両親を探す旅に出た一休、蜷川新右衛門だが、道中、八つの事件に遭遇する。この道中ものという設定、八つという事件の数から、発想をモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンもの『八点鐘』から取っていることは明らかだが(『水戸黄門』はミステリじゃないしな)、もちろんこれはトリックを模倣しているわけではないから問題はない。一休さんの八つのとんちばなしと、事件とを絡めるやり方はいささか強引だが、これもクイーンの「Q.E.D.」や麻宮サキの「テメエラゆるさねえ!」と同じ定番だと思えば(例えが不適切か)、まあ腹が立つほどではない。
 何より、それほどムリをしたトリックがないのである。それはやや他愛ないという印象を与えはするものの、少なくとも「これはおかしすぎる」と反発したくなるような結果にはなっていない。いや、多少はちょっとムリがあるな、とは思うが、語り口が上手いので、そんなに気にならないのである。基本的に鯨さんの小説も、チェスタートン式、泡坂妻夫式の「現実にはちょっとムリっぽい」けど、小説のトリックとしては有効、という範疇のものなので、例えば第四話『尾張・鬼の棲家』の家屋消失トリックなどは、ちゃんと伏線を張っているのだから、笑って認めればよいのである。
 一休さん一行が旅するのは難波・大和・伊勢・尾張・駿河・伊豆・相模・武蔵の八国。残念ながら九州には来てくれなかったけれど、駿河のお茶や伊豆の蛤、相模の焼き団子などに舌鼓を打つ一休さんの姿は可愛らしい。でもタイトルが『一休さん東海道グルメツアー殺人事件』にならなくてホントによかった(^_^;)。
 こういう連作短編のほうが、鯨さんは本領を発揮していると思うな。最後に謎を一つ残したまま終わりってことは、第3弾もあり……?

06月28日(土)
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