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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■最上の味と最低の映画/映画『恋に唄えば』/『ブラックジャックによろしく』3巻(佐藤秀峰)
とは言え、しげもそんなに期待してたってわけでもなかったらしい。和製ミュージカルはともかく押さえとかなきゃって義務感に近い感じで見たかったもののようだ。エリコの父役で石田太郎さんが出てたんで「やっと名前と顔が一致した」ってのが唯一の収穫だったとか。
あー、読者のみなさん、石野真子と篠原ともえのファンでない限り、これ全然楽しめないと思いますので、ムリに映画館まで行く必要ないです。どうしても見たい人はレンタルDVDが出るまで待ちましょう。私は100円なら買います(^o^)。
マンガ、佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』3巻(講談社/モーニングKC・560円)。
こういう医者ものだとどうしてもマンガとしてどうこうというより、その中身、テーマとなってる医療問題に目が行きがちだけれど、ここはあえてマンガとしてどうかってことを言っときたい。小林よしのりの『ゴーマニズム』と同じで演出がシツコイんだわ、これ。
医療の問題は単純な善悪二分論で語れるものじゃなかろう。少なくとも藤井教授の「臨床能力はなくても研究成果で数百万人の患者を救った」という言葉には説得力がある。そのことを踏まえてなお医者に臨床経験がないのはいかがなものか、と提言するならともかく、ここで作者の追求は止まって、話は別エピソードに行っちゃうのだ。ツメが甘いっつーか、ガクセイの小論文みたいに「こんな問題点については、今後の課題であろう」って実は結論出すの逃げてるのに、エラソウにまとめてんだよな。この手の演出はマンガとしては三流である。
ツメが甘いにもかかわらず、テーマだけはどんどこハードなのをぶちこんできて、今巻から「ベビーER編@」だそうな。
作者は高砂先生に「リスクを追う覚悟がないのなら子供なんて作っちゃいけないのさ。理屈じゃそうだろ……? 要は理屈じゃ子供は産めねえんだよ」って言わせてるけど、その結論出しちゃったら、その後、ドラマは作れないんだけどね。本来。だってリスクがあるってわかってて子供作るバカはいないんだから、子供作ってる親は、みんな甘い夢見てるか、何も考えずに子供作ってるって言いたいんでしょ? つまり、「人間の命なんてテキトーに作られてるだけで、もともと何の価値もない」という結論を出しちゃってるのだ。で、そんなこと言った後で、どんなに人間の尊厳だとか命の尊さとか言ったところで、キレイゴトにしかならんやん(^_^;)。
で、よしゃいいのに「障害児を持つ親の問題」をテーマにしてくるし。こんなの個々の問題で普遍的な答えなんか出せやしない。本家手塚治虫の『ブラック・ジャック』がうまかったのは、「医者はなんのためにあるんだ!」と叫びながら個々の病気については、それはそれ、あれはあれ、と割り切って描いてた点にあるんで、このマンガのように妙に普遍性を持たせようとすると、まず間違いなく失敗するんである。
あるとき、ブラックジャックは無頭症の赤ん坊を、母親にそれと知らせず殺した。育つ見こみのない子供を親に抱かせるわけにはいかなかったからだ。ドクターキリコだけでなく、ブラック・ジャック自身も「黒い医者」であることを示すエピソードだった。医者は時として悪魔になるしかない。そこまで踏みこむ勇気がこの作者にあるのかな?
どうもこの作者、そこまで踏みこもうってリスクを回避しそうな気がして仕方がないんだけどね。「研究か臨床か」の問題に結論出さなかったとこ見てもね。
11月22日(金)
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