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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■父との遭遇/『D.Gray-man(ディー・グレイマン)』6巻(星野桂)
前巻で、クロス元帥を追っかけてたアレンとリナリーの前にいきなりアクマの大群が押し寄せて、実はそいつらは「咎落ち」したエクソシスト、スーマン・ダークを狙っていたのだった……って展開、まるでこれまでと繋がりがないんだけれども、その「慌てっぷり」が実に分かりやすくて、「現象」としては面白い。これが最初から計画されていた構成だとするなら、この作者、ストーリー構成力はまるでないと言い切るしかないんだが、もっともジャンプマンガの「人気がなければ即打ち切り」システム自体が、マンガ家さんから等しく「構成力」を奪ってるんで、作者を責めにくいところもある。
慌てたおかげで、これまで一面識もないアレンが、スーマンにいきなり感情移入するのが不自然極まりないなど、欠陥だらけの物語になっちゃってるんだけれど、絵がキレイでキャラだけは魅力的だから腐女子のファンはストーリーがワヤでも全然いいんだろう。この「絵とキャラだけ」の伝統も萩原一至『BASTERD!』以来のジャンプマンガの悪癖なんだが、かえってその方が腐女子には妄想を逞しくする余地が生まれるから、人気は出るということになる。
でもなー、フツーのマンガファンが読みたいのは「マンガ」なんであって、「イラスト」じゃないのよ。マンガが腐女子に支えられるような現状は、正直、いつかはマンガを滅ぼすわな。
それでも『D.Gray₋man』は今みたいな「引き伸ばし」などの迷走が収まれば千年伯爵との決戦まで物語を引っ張って行ける要素は充分持ってると思うのである。思いっきり「パクリ要素」丸出しだった一巻のころに比べれば、キャラクターがだんだん「生きて」きた。
特に千年伯爵とノアの一族、ロード・キャメロットにティキ・ミックといった「敵方」は、黒の教団のエクソシスト全員をひっくるめてもかなわないくらい、ダークな魅力に溢れている。これも言うまでもないことだけれども、主人公を「成長」させるものは魅力的な敵が主人公の心を揺さぶってこそなんでね。単純に「私は神だ」なんてほざくだけのバカを配置しちゃいかんのよ。
今巻のティキ・ミックのセリフ、「勇敢な奴は死ぬまでにほんのちょっぴり時間を与えてやった方がいい。心臓から血が溢れ出し体内を侵す恐怖に悶えて死ねる」、悪の魅力はこれくらいでないとね。
つまりはこのマンガ、決して「子供向け」なんかじゃないので、今回の「咎落ち」エピソードみたいなありきたりで余計な回り道なんかしないでいいのである。ティキ・ミックにスーマンを殺させる結末があるから、何とかキレイゴトのハッピーエンドにならずに済んだ点は評価したいが。「スーマンは助からなきゃいけなかったんじゃないか」なんてキャラのみに偏ったファンの独りよがりで腑抜けた意見なんかは無視してよい。
そう言えば、言語学の専門雑誌『言語』11月号に、ついに「腐女子」が載ったぞ(笑)。
「アニメやコミックス、コスプレなどに熱中しているオタクの女性たちが自虐的に称しているもの。(中略)男性のオタクに比べて『女性オタク』たちはファッショナブルで、コミュニケーションが上手で、美しいものに憧れているという特徴があるとされている」んだそうな。
あー、そうなんスか? ボーイズラブ系同人誌って、男の目から見るととても「美しいものに憧れている」とはとても思えないんスけど。
まあ、男のオタクがたいていキモ過ぎだから、反作用的にはそう見えるというのもあるかもしれないねえ。実際、ブログや日記開設してるオタクって、女子の方が圧倒的にハバ利かせてるもんな。
けれど、だからと言って「コミュニケーションが上手」って意見に対して首を傾げざるを得ないのは、彼女たちの見ている世界と視点が異常に狭いからなんだけどね。四十を越してるんじゃないかという女性オタクであっても、世間知や分別が感じられない人がやたらいるのだ。
やっぱさー、「自分が生まれる前にあった、小説、ドラマ、映画、マンガ、アニメなどに対しても、今あるものと同等かそれ以上の愛情と見識を持っている」人でないと、オタクとは言えないし、いつまでも「腐ってる」と自虐的な態度しか取れないんじゃないかね。
10月23日(日)
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