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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ひとの住む街/『王道の狗』4巻(安彦良和/完結)
)「たしかに安彦さんの論旨はズレていると思います。多分、ふだんから夜話をみておられず、また番組も(書いておられるように)半分しか見ておられない。おそらくビデオで確認もされてないのではないか、と思います」
)「安彦さんは、いくつもの情報をいしかわさんの発言ととり、さらにその解釈でも誤差を生んでいるように見えました(中略)」
)「僕の理解の一つは、『虹色』の回の流れで、いおうとしていえなかったんですが『歴史(モノ)好き』の読み方(リテラシー)では、物語と直接の関係がなくても歴史上の人物が出ただけで『あ、こいつはこれからもっと苦労するんだよな〜』『こいつは、この前にこんな事件をおこした奴だな』とか、勝手に補助線を引いて楽しむところにあります。そういうことに興味のない人には、司馬遼太郎も『余談や無駄ばかりで物語になってない』みたいな読み方になってしまいますが、歴史好きは、まさにそこが読みどころなんですね」
)「レギュラーのうち、いしかわ、岡田は、そういう意味では歴史(モノ)好きじゃないのかな、と思います。その感度の差が、あの番組では高千穂さんといしかわさんのズレになってるように見えますね」
つまり、いしかわじゅんが「興味がない」と言ったのは、作品に対してではなく、「歴史上の人物が登場した時の歴史物好き独特の読み方」についてであって、作品批評の問題とは何のかかわりもなかった、ということだ。
しかも、どうやら安彦さんが見ていない番組の前半では、いしかわさんは安彦良和を褒めちぎっていたらしいのである。一見「批判」のように聞こえるいしかわさんの言動も、本論から枝分かれした細論の部分での批評ではなかったか。安彦さんの怒りは初めから的外れであったのである。
となると、安彦さんが一番拘った「動き」に関する反論もかなりズレがあるのではないかという気がしてならなくなる。マンガの絵の「動き」について語り始めたら、こりゃまた何十枚原稿を書けばいいか判らなくなるのでやめておくが、アニメーター出身の安彦さんの絵が、通常のマンガの「動き」の描写と違っていることは事実だ。そこのところの説明が批評者の舌足らずなどの関係で誤解を生んだ可能性もある。
何にせよ、「表現」は原則的に「誤読」を排除できないものであるが、活字という形を取らない『マンガ夜話』のような「雑談」形式では(編集を経た『アニメ夜話』でも所詮は同様)、どうしたって誤解の振幅は激しくなる。正直な話、私はマンガ家としてはいしかわじゅんよりも安彦良和のほうが圧倒的に好きなのだが、愛着のある作品を「貶された」と思い込んだゆえのやむにやまれぬ怒りであったという心情に同情はするけれども、そもそも「ちゃんと相手の文脈を捉えて批判する」という批評の基本中の基本を弁えていないと揶揄されても仕方がない安彦さんの今回の「暴走」を、いささか悲しく思うのである。
つかさー、「安彦さんバンザイ」を唱えてる「アンチいしかわ」と思しい批評家気取りの半可通、おまえらが安彦さん持ち上げるとさあ、かえって安彦さんの株を落とすことになりかねないんだよ。マトモな批評をしたいんなら、ちゃんと双方の意見を事実として確認した上で言えよってな。……再度私も念のため言っておくが、いしかわじゅんの批評にもこれまでの流れから判断するに、安彦さんが指摘したこと以外でかなりトンチンカンな言い回しや論理的な破綻がやたらあると思うんだけど、それは番組を確認していないから、断言することは控えておきます。今回の文、決して「いしかわじゅん擁護」のために書いたんじゃないからね。
「あとがき」の感想で、マンガの感想になってないけど、本編はもう、まさしく「歴史物好き」には大興奮の傑作です。陸奥宗光の権謀術数ぶりがいいなあ(あくまでマンガとしてですよ)。
04月02日(土)
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