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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■「よろしかったでしょうか」の謎/映画『ソラリス』/『ウエスト・ウイング』(エドワード・ゴーリー)
カットバックが乱雑に繰り返される(普通は現実のシーンと回想のシーンは交互に入れ代わるものだが、時には回想が連続する)ことによって、現実と回想との境界線が曖昧になっていく。観客は何度か混乱に陥るが、それがラストシーンの伏線となって、実に効果を上げている。「映像の文法」が「主題」とこれだけ密接に係わり合い、効果を上げている例はめったにない。それを見抜けなきゃ、「オマエは映画を見る目がない」と言われたって仕方ないよ。
脚本・撮影・編集・監督と一人四役をこなしたソダーバーグ監督、旧作の呪縛に捕われずにきちんと自分の映画を作っている。旧作とどちらが上かを語ること自体ヤボに思えるくらいだ。
ジョージ・クルーニーも、あまり私はこの人の演技を買ってはいなかったのだが、感情の抑制されたいい演技をしている。
これ以上の批評はどうしてもラストに触れるしかないのだが、友人から「絶対書くな」と言われているので、残念ながら省略(^o^)。前作とは違った結末のつけ方をどう評価するかで賛否が分れるところだろうが、私は可である。
タルコフスキーに強い影響を受けた日本の某映画監督の某作品とソックリになっちゃったのは、これも同族進化というやつだろうか(^o^)。
エドワード・ゴーリー『ウエスト・ウイング』(河出書房新社・1050円)。
1963年製作、ゴーリー氏は38歳、これが14作目の絵本になる。この年には代表作の一つ、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』ほか、5冊の絵本を出版しており、最も油の乗り切った時期の作品と言えるだろう。
いつもの翻訳者、柴田元幸氏の名前がないがそれはそのはず、これは純然たる「絵本」で、文章はついていない。説明を排除して、物語は読者の想像に任せるという方式なのだけれど、何しろ作者がゴーリー氏なものだから、これがもう怖い怖い。子供が普通の絵本と間違って買っちゃったら、悪夢にうなされそうだ。もっともそれはゴーリーの他の絵本についてもそうなんだけどね。
原タイトルの“The West Wing”は「西棟」の意味。もっともみなさんご承知の通り、ホワイトハウスの別名も「ウェスト・ウィング」であるから(そういうタイトルのドラマもあったね)、そのあたりのニュアンスも含めているのかどうか。この西棟で起こった出来事を象徴的な30枚の絵にしたものが本書。絵本と言うより、「西棟」をテーマにした絵画集と言ったほうが妥当かも。
〔表紙〕 黒雲の漂う空を背景に、切り石で出来た西棟の一部が描かれる。整然と並ぶ窓はいずれも暗く、中は見えないが、左下の窓だけはなぜか石で固められている。
〔見返し〕右下に小さく、しゃれこうべを種のように撒く蝶ネクタイの少年。
〔扉絵〕 「西棟」と表札のかかった入口に入って行く人物。中は暗く、人物の姿も足元しか見えず、あとは影に隠れている。
1、カーペットの敷かれた床。カーペットの模様は一つ一つが人の顔のようにも見える。そしてどこかに伸びている階段。
2、扉を開けて部屋に入って来る女。福は黒く喪服のようでもある。
3、誰もいない部屋、窓の下に靴が三つ、落ちている。
4、扉が開いている。廊下を挟んで、その向こうの部屋の扉も開いている。
5、壁にかかった絵。黒雲に覆われた空の下、森の向こうに丘があり、道が伸びている。丘の上には墓石が小さく一つ。
6、椅子に座り、杖をついて瞑想する禿頭の老人。シルクハットが床に置かれている。
7、壁に建てかけられた梯子。
8、床に置かれた荷物。
9、水差しを盆に載せて運ぶメイド。
10、部屋に置かれた姿見。扉が映り、誰かが裾だけ見せている。
11、水没している廊下。
12、手すりの前で、髭を生やした全裸の男が背中を向けている。
13、宙を舞う2枚の布。
14、部屋に置かれた彫像。
15、床に倒れている男。
16、階段と窓。窓は塗りこめられている。
17、部屋に落ちている一枚の紙片。窓からそれを覗きこんでいる白い影。
18、廊下の陰から覗いている四本の棒。椅子が倒れているのだ。
19、廊下を歩く全身包帯のミイラ。
20、床に置かれた丸太。
21、人の形をした壁の染み。それは宙に浮いているようにも見える。
22、ひび割れた床。
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07月18日(金)
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