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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■だからそれはラクな意見なんだってば/映画『バトル・ロワイアルU 鎮魂歌(レクイエム)』
今回の主役、青井拓馬(忍成修吾)が感情移入のしにくいキャラクターであるのも弱い。感情的ですぐにキレるために母親(三田佳子)にも見捨てられてるという設定だが、ホントにすぐ切れて絶叫ばかりしてるので、最初コイツが主役とは気づかず、すぐ死ぬんじゃないかと思ってたくらいだ。キレやすいやつだけど、実は雨の日に濡れそぼっている捨て猫を拾って助けてるとか(^o^)、優しいとこ見せる描写でも入れとかなきゃ、客は乗れないてば。浅倉なお(酒井彩名)がどうしてこんなのが好きなのかもよくわからない、つまり主役級のキャラについてすら、描写不足が目立つのである。
監督の眼はどちらかというともう一人の主役、キタノシオリ(前田愛)の方に注がれ過ぎていたのではないか。彼女がバトル・ロワイアルに参加したのは、父親を殺した七原秋也への復讐のためではない。父親の残した絵の中に女神のように描かれていた少女が、自分ではなく中川典子(前田亜季)であったこと。生前の父親を「オジサン」と呼んで嫌っていながら、実は自分も父親に拒絶されていたことを知ったとき、父親の心を捉えた中川典子とはどんな少女だったのか、彼女はそれを知らないではいられなくなった。
キタノは確かに実の娘を拒絶した。しかし、キタノが最期に「人を本気で憎むことがどういうことなのか考えろ」とメッセージを送ったのも娘であった。その二律背反ゆえに、シオリはただの嫉妬でも復讐でもなく、七原に接触せざるを得なくなるのである。
この描写は実に面白いのだが、でもどっこい、演じる前田愛の演技力が今一つなのがねえ(-_-;)。それと前田愛、ちょっと顔が丸くなり過ぎてるんじゃないか。こっちも前田亜季に演じさせたかったような。
桜井サキ(加藤夏希)の弟とのエピソードも、教師RIKI(竹内力)が妹を秋也のテロで失っている設定も、ムダに話を混乱させているばかりである。筋がストレートで一気に話を展開させているようでいて、実は途中途中で退屈な描写が多いのである。
じゃあ、つまんなかったかというと、見てる間は実に面白かったんだよねえ、この映画。なぜって、これ、徹底的な「反米映画」になってたのよ。そんなん、ここ10年くらいエンタテインメント映画の中では殆どなかったんとちゃうか(『ちんちろまい』の中で武田鉄矢が「アメリカとも一度戦争して勝つ!」と酔っ払って言ってたけど)。
教師RIKIが黒板に「これまでアメリカに空爆された国」を列挙するシーン、七原秋也が電波ジャックして世界中のテロリストたちに檄を送るシーン、この二つのシーンがシンクロして、アメリカが「正義」という自国のアイデンティティを維持するためだけに戦争をし続けていることを重層的に描き、実は大人も子供も、戦うべき真の相手が米帝国主義であることを明示する。そして七原は例のアメリカを敵とする国でレジスタンスを続けるのだ。
単純過ぎるほどに単純な論理だし、その主張に異議を唱えたくなる人もいるだろう。「テロリズムを肯定する気か」とかなんとか。でもそれがこの映画のまさしく主張なんだから、恋愛映画を見て「なんで恋愛をテーマにするんだ、オレは恋愛が嫌いだ」と文句つけるのと同じことで、それは全くの筋違いというものである。
だいたい、アメリカべったりの主張だって単純なことに違いはないのだ。ここまで堂々と「アメリカにテロしかけて何が悪い」と言い切られては、むしろその単純さゆえに「映画としては」これを評価しないわけにはいかない。映画を映画として楽しむやり方を知らない人間はまた激怒したりするんだろうけどね。
07月11日(金)
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