ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491706hit]
■S(エス)の悲劇/DVD『みんなのいえ』/『ブレーメンU』4巻(川原泉)
これだけじゃ何のことかわかんないから、ちょっとだけ中身をバラしちゃおう。
女の子どうしが絡んでいて(もちろん「うっかり」である)、それを見たもう一人がちょっとドキドキして、「まあ、S?」って呟くシーンを書いたのよ。(〃∇〃) てれっ☆
これでもよく分らない人のために説明しておくと、この「S(エス)」っていうのは「Sister」の頭文字なんですね。昔、女学校なんかで、女の子どうしなのになんだかすごく仲よさそうなカップルを見たら、「ねえねえ、あの方たちって、もしかして“S”なんじゃないかしら」とか言ってたんですね。
まあ、ハズカチイ。
もちろん今となってはほぼ死語になっていて、おそらく実際に会話の中で使われてたのは昭和40年ころくらいまでだと思う。私は女学校に通った経験はないから、女の子が使ってるのを実際に耳にしたことはない。いつどこで覚えたかっていうと、母親が使ってるのを聞いたのが最初だ(^o^)。
今はもっと露骨に「レズ」とか言うのかも知れない。
練習場での話し合いでは、「百合」に変えようか、とかいう話になったということだ。
けどねえ、言っちゃ悪いけど、みんな「脚本」ってモノが解ってないよ。ここは、「S」以外ではセリフそのものが成立しなくなってしまうんだよ。
このセリフを言うキャラクターには、どこか浮世離れしている(ように見える)という性格設定がある。
だから「レズ」だの「百合」だの、ストレートかつ今でも通用するようなコトバは似合わないのだ。それに、そんな客に一発で意味がわかるようなセリフを使われても、ただ単に目の前の状況を見て、そのまま説明しただけのことに過ぎなくなる。客に何の引っ掛かりも与えなくなってしまうのだ。
たとえ観客の大半に意味が通じなくとも、ここは「古い」言葉を使ってもらわなければ困る。
意味が分らない客にはここでキョトンとしてもらいたいし、「S」の意味を知ってる観客が「イマドキそんなコトバ使ってるやつがいるんかい」と心の中で突っ込んでほしいのだ。不自然さに気づいてもらった方が、脚本家としては嬉しい。どうも役者は「自分が言いやすいか」ばかりに気を配って、客にどう見てもらうか」ってことにまで気が回らないやつが多い。
だからこそ「演出家」が必要になるんだがなあ。
更に言えば、「レズ」という言葉は直接的過ぎて下品に聞こえるし、やはりこのキャラクターに合わない。「百合」はやや古めかしい感じがしないではないが、もともと「薔薇族」に対する「百合族」という対照語として使われた経緯があるだけで、「S」にあるような「女学生どうしの戯れ」のようなニュアンスには欠けている。「S」というコトバの持つ甘美さも含めて、あえて死語を書いたのだが、そういう意図が読めないというのは情けない話である。
それに「S」というコトバを完全な死語と見なすのはどうだろう。コトバというものは生き物で、いったん死んだかと思っていたら、ひょんなことで復活し、また使われ出す、ということもあるのだ。あえて死語を使うことで、「味わい」を出すという効果もある。『オトナ帝国』を見よ。
それでもどうしても「百合」で行きたい、というのなら、せめて「ゆりゆり?」と二度重ねていただきたい。普通、そんな喋り方をする人間はいないから、これでこのコトバにも「キャラクター」が発生する。キャラクターとセリフが一致するのだ。『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスの「泥棒さん?」がゾクゾクッと来るのは、、まさしくこの効果による。そうなんだよ、「泥棒」に「さん」付けしちゃうんだよ、あの「お姫さん」はさ(* ̄∇ ̄*)。
セリフってのは、そこに命を吹き込むことだってこと、忘れちゃいかんよ。
マンガ、川原泉『ブレーメンU』4巻(白泉社/ジェッツコミックス・650円)。
祝! 4巻突破!
これで川原さん、自作の最長不当距離を達成しましたね。
『オペラ座の怪人』を落としまくってたころを思い出すと、なんかもー、それだけで嬉しいですよ。頑張れ川原さん!
ついにヘルツォーク編が今巻で完結。
[5]続きを読む
01月19日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る