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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■プールサイドの妖精……誰が?/映画『パワーパフガールズ ムービー』ほか
 天才科学者の少年(デクスター)に、乱暴女の姉(ディーディー)のコンビってのも、なんだか日本のマンガにあったような気がするが、思い出せん。マッドサイエンティストの姉に気弱な弟が振り回されるってパターンなら、あろひろしとか描いてそうだけどな。
 オマケ映画だから、ツマンナイかというと、さにあらず、天才が、日常的な常識には欠けている、というのは、シャーロック・ホームズからパタリロに至るまでの黄金パターン。これを生かしたメリハリのいい短編にしあがっている。
 全身に水疱瘡ができたデクスターを見て、ディーディーが、「それ掻いちゃうとニワトリに変身しちゃうわよ」、ウソをつく。と言ったって掻かずにはいられないデクスター、ロボットに電気ショックを浴びせてもらったり、超巨大メカを作って、カラダを縛りつけたり(どでかいワリに、機能がカラダを縛るだけってところが秀逸なギャグ)するけれどもやっぱり掻いちゃう。
 もう劇場の大画面に、全身を掻きまくって狂喜するデクスターの痴態が踊る踊る(^o^)。こういうキタナイキレテルネタを堂々とやってくれるところがいいねえ。

 映画『パワーパフガールズ ムービー』。
 本国での公開は既に終わり、前評判はよかったものの、興行自体はイマイチ伸び悩んだようだ。製作費2500万ドル(換算すると約30億円? どっひゃー!)に対して興行収入は1000万ドル。やっぱり『ポケモン』ほどの認知度はないのかなあ。アチラの批評じゃ、「テロ事件を連想させてよくない」なんてのもあったそうである。バカはいるよな。
 なんかねー、『クレヨンしんちゃん』についても「だって『クレヨンしんちゃん』でしょ?」と、自分のアタマでモノ考えずに見ないやつらは腐るほどいるからねー、『PPG』を普通の子供向けアニメだと思ってツマンナイと決めてかかってるオトナ、多いんじゃないかなー。確かに『サウスパーク』みたいにハッキリオトナ向けを打ち出しちゃいないけど、そんじょそこらのファミリー向けアニメとは格段に質が違う。
 いやあ、ある意味実験アニメといっていいくらい、これまでのアニメ技術の粋を集め、それを更に発展させて表現している。単純な線のキャラクターだから勘違いする客もいると思うけれど、一見、テレビアニメの延長線上にありながら、その演出が映画としてブローアップされてるのがすごい。そのすごさがわかりにくい点では『となりの山田くん』並なんだけれども(^_^;)。
 もちろん、全編がデジタルで作られてるんだけれど、あのCG映像の無機質感が見事なくらいに払拭されている。すなわち、セルアニメの柔らかな質感を残しつつ、カメラアングルは自由自在、ということをやってのけているのだよ。
 日本のセルアニメは、もともと奥行きを表現するのには、もっぱら「職人の技術」に頼っていたわけだけれども、デジタルを導入することによって、一応以前よりは楽に奥への動きを表せるようになった。けれど、『どれみ』とか見ててもわかるけど、まだまだ「タテへの引き」にしか見えない部分が多いんだよね。『PPG』がすごいというのは、アニメでありながら、きちんとカメラを意識したアングル、レイアウトを常に意識していること。
 たとえば、テレビシリーズでも、キャラクターにカメラが迫っていく時に、遠景、中景、近景と、何段階かに分けて近づいていく、という映画的技法を使っていたけれども、こういうのは単にただアップにしていくより、ずっとキャラクターの心理と観客の心理がシンクロする効果があるのだ。カットを割るだけでなく、少しずつ近づいていきながら、絶妙のタイミングでキャラクターのアップに迫る。うまい!
 ほかにもあそこの構図はどうの、あのタイミングはどうのといろいろ言いたいことはあるんだけどさ、キリがないから省略。けれど、こういうさりげない演出をキチンと評価していかなきゃ、アニメがいつまで経っても子供のもの(この場合の「子供」は「バカ」と同義の差別語だ)で終わっちゃうよな。

 まだ書き足りないが、規定枚数を越えたので、今日はここまで。明日の記事に続く。

08月06日(火)
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