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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ファンタジーの地平に/映画『ハリー・ポッターと賢者の石』/『バイリンガル版 ゲゲゲの鬼太郎』(水木しげる)
妖怪退治ものをあえて外したのは、鬼太郎の多彩なイメージを初めから海外の読者に固定されたくないという配慮からだろうか。でもこの二作、ねずみ男と鬼太郎の仲がいい作品なので、キャラクターどうしの絡みよりも話の面白さで選んだというところなのかもしれない。
英訳本となれば、日本語独特の表現がどう訳されたかということが気になるところだが、『鬼太郎』の場合は当然「お化け」「妖怪」である。
『ゆうれい電車』では“ghost”、『大海獣』では“goblin”と、訳し方を変えている。
京極夏彦の解説では、更に、“monsters(怪物)”、“spirits(精霊)”、“ghostlike creatures(幽霊のようなもの)”、“demons(悪魔)”、“godlike entities(神様のようなもの)”という解説を加えている。……確かに、砂かけ婆あや塗壁を外国人に説明するのは難しそうだ。
ほかにも、「ほうほう」と頷く訳、首を捻る訳などあって面白い。
「線香」は“bearning sticks”。でも、この訳だけじゃなぜ棒が燃えてるのかわかんないんじゃないかなあ。あれってもともとは死体の腐臭をごまかすためだったんだね。
「お守り」は“good−luck charm”か。でも向こうじゃ蹄鉄みたいなもんじゃなかったっけ。携帯用の「お守り」ってのとはこれもちょっと違う気がするが。
「ねずみ男」は“Ratman”。当たり前だけど、ちょっとカッコよく聞こえちゃうなあ。夜の町で正義を守ってそうだぞ。
「大海獣」が“leviathang”というのは、なるほど、ではある。
単に“sea monster”なんて訳すより、気が利いてる。このマンガでは鯨の先祖「ゼオクロノドン」(正しくは“zeuglodon<ゼウグロドン>”であることが今回の英訳で分った。水木さん、結構こういう用語の転記ミスは起こしてるんである)ということになっているが、もちろんその造型は実在したそれよりも、はるかに「妖怪」的である。
けれど、これまでに発表されたイラストやゲームに紹介されている「レヴィアタン」あるいは「リヴァイアサン」のイメージと大海獣とでは、かなり隔たりがないだろうか。私が見たことがあるのは、巨大魚、怪竜、海蛇、あるいはタコである。……と思って、念のためネットで調べてみたら、「くじら」とい説もあるのね。つまりは伝説性が高く、固定されたイメージというのはないということなのだろう。
広告でほかの英訳マンガも掲載されてるが、そのタイトルが結構凝ってるんだねえ。
感心したのは、『ひみつのアッコちゃん』。“Akko−chan’s Got a Sectet!”だと。原タイトルより「どんなヒミツなの?」と聞きたくなるね。
02月02日(土)
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