ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491654hit]

■バラゴンには女の人が入ってるんだよ/映画『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』ほか
 「ツッコミどころ」程度じゃありません、そもそも「ゴジラは残留思念」「ヤマト聖獣」などなどの基本設定自体が破綻しまくってるのに、通常の意味での「傑作」って言葉はあたんないんじゃないでしょうか。
(中略)
 テロ映画に指定されようが、そういう設定なら、初めから、アメリカを攻めるがスジでしょう。
 そこがまずもって根本的な設定ミスだと思うわけです。ゴジラが日本で暴れる説得力を持たせようとして、見事に外してます。
 いや、映画の「流れ」としても、その設定ミスが足枷になってて、前半のテンポがタルくてもたつきまくってるんですよねえ。人物の行動原理がハッキリしてないものだから、「こいつなんでこんな行動とるわけ?」ってのがネックになってて、観客が映画にノりきれない。
 新山千春演ずる由里が無意味に怪獣に近づきたがるのもアホですが、まあ、これは「江戸川由利子の末裔」ということで許しましょう(ホントは許しちゃいかんと思いますが)。
 けれど、天本英世演ずる伊佐山(だいたいこいつがホントに伊佐山だったかどうか、わかりゃしない)が「ゴジラは残留思念」と言うのを聞いて、由里たちがなんの根拠もなくみんな信じちゃうなんて、あまりにもヘンじゃありませんか? 普通、少しは疑うでしょう。もしかして、こいつらみんな、この時点で天本英世のマインドコントロールによって洗脳されちゃったのか(笑)。それともあいつら全員モルダーなんでしょうか?
 ……あ、そう言えばこいつらみんな、[オカルトBSのスタッフ」だって設定だった(笑)。
 でも、主役が全員「ムー」者だなんて、観客に「登場人物に感情移入するな」って言ってるようなものではありませんか。
 まあ、あの映画の中ではゴジラやヤマト聖獣をバカにするやつらはみんな死ぬ運命にあるみたいですから、主役をのーてんきな信者さんにしなきゃならなかったのも仕方ないのかもしれません。でも、私は申し訳ないんですが、宗教映画にはノれません。

 「英霊」の問題に話を戻しますと、天本さんのセリフを聞きながら、なんだか、『はだしのゲン』で、広島に原爆落とされた直後にお母さんが天皇批判したのを思い出しましたねー。まあ、日本軍部の不甲斐なさはあったにしても、落とされた方の落ち度ばかりを責めて、肝心の大量殺戮兵器を落とした方の人道上の罪を責めないんなら、そりゃ結果的に原爆投下を認めたのと同じですって。
 それともなんですかね、ゴジラの霊の中には太平洋で死んだアメリカ兵の霊も混じってるってことですから、死んでからも日本兵はアメリカ兵にこびへつらって、日本を攻めることにしたんですかね。そんな情けないゴジラ、ゴジラじゃないやい!
 「日本人が堕落したからだ」って天本さん怒鳴ってましたけどねー、それはその、英霊たちの思いじゃなくて、天本さんご自身の怨念なのでは(^_^;)。で、天本さんがそう言ってるってことは、要するにヤマト聖獣の思いだって、実はゴジラと変わらなくて、今の日本に対して憤ってるってことですからねー(だからバラゴンもモスラも日本人を平気で殺してる)。
 つまり何が設定上、一番破綻してるかって、あの怪獣たちが闘わなきゃならない理由がないってことなわけです。

 ……なんだかいつぞやのゴジラVS沢口靖子もガクッと来ましたが、今度のは要するにゴジラVS天本英世。そう思って見ると確かに笑えて楽しいんですが。
(中略)
 ゴジラ映画に相応しいベストとは言えないんじゃないですかね。
 特撮は確かに誉めるべきところもあるけれど、ギドラがキングギドラになったって、口で言うだけじゃねえ。あれは絶対、ヤマタノオロチに変化させなきゃ怪獣ものとは言えません。
 もう「ゴジラ細胞」だの「残留思念」だの、妙な理屈はどうでもいいです。映画の流れがもたつくだけだから。
 平成ゴジラにやたら目立ってたしょぼいメロドラマの影がやっと薄くなったと思ったら、今度は軍人の護国意識だの、親子の交流だのと、怪獣に襲われてるってのに、何を自己陶酔してばかりいるキャラがウロチョロしてるんでしょうか。
 これを誉めるなら、『オール怪獣大進撃』もキチンと評価すべきだと思います。
 だって、怪獣がユメマボロシって点では同じじゃないですか。

12月18日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る