ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491720hit]
■夢の終わり/映画『王は踊る』ほか
なのに、この期に及んで、しげはまだ私に「劇団にいてほしい」などと自分勝手なことを言っている。もともと、私が腹を立てて抜ける可能性が高いことを予測しないで、いつのまにか勝手に私をスタッフに組みこんでいた適当さ加減がこういう事態を招いたのだという自覚がないのだ。
「プロデュース形式を取ったのは参加したい者だけ参加すればいいということじゃなかったのか? それをどうして引きとめる? もともと俺は、お前が感情的な行動をとらないなら、という条件付きで参加してたのであって、約束を破ったお前に付き合う義理はないだろう」と一蹴する。
と言うか、約束なんて結婚してから守ってもらった記憶がないぞ。
いくらでも反省できるチャンスはあったのに、それを全てしげ自身が潰してきたのだ。ここまでマジメに付き合っただけでもよしとしてもらいたいものである。
……どうせあのアホはまた何も反省しちゃいないんだろうけど。
マンガ、星里もちる『本気のしるし』3巻(小学館・530円)。
星里もちる、もう完全に柳沢みきおの亜流になっちゃったなあ。
青春ほのぼのギャグマンガ描いてた人が、ドロドロした失楽園ドラマに走る法則ってのが何かあるのだろうか。私生活で何かつらいことがあったんじゃないかとか勝手に想像したくなるくらい、描かれる人間関係に救いがなくなってきている。
意識的にか無意識的にか、はかない女を演じて男を弄んでしまう女。
女に溺れれば身の破滅と知りつつ、その魅力にとりつかれてしまう男。
「バカ、その辺でやめとけ」と思わず声をかけてしまいたくなるが、そこで立ち止まっちゃ、マンガも完結してしまう(笑)。
見ていて男のバカさ加減に嫌気がさし、女の卑劣さに腹を立て、これじゃハッピーエンドは期待できない、こんなムナクソの悪いマンガがそうそうあるかと思いながら、いつの間にか固唾を飲んで、愚かな不倫に身をゆだねる男女の行く末を見守っているのだ。
それは多分、私もまた愚かな男であるからなのだろう。
DVD『アヴァロン』、吹替版で見る。
押井守監督自身がアフレコを担当したただけあって、キャスティング、その演出、これが別録りでカラミがないとは信じ難い。
アッシュ役の財前直見、私はこの人を『天河伝説殺人事件』でしか知らないのだが、たいしてよい印象はなかった。しかし、声優としてその“演技を聞いた”時、意外に口跡がハッキリしていて、凛としたムードを醸し出せているのに驚いた。
ゲームマスター役の日下武史も『天河』に出演しているが、財前直見との再度の共演は偶然だろう。劇団四季の重鎮として長年鍛えてきた演劇的な口調は、『攻殻機動隊』の「パペットマスター」を彷彿とさせる。つまり、彼もまた「演出家」としての立場にありながら、「ゲーム」のキャラクターであり、「演劇」の舞台に立つ登場人物の一人に過ぎないことを暗示しているのだ。
他のキャストも、役者の実力を見抜く押井監督の力量が見て取れる。
山寺宏一(スタナー)、范文雀(受付の女)、田中敦子(ジル)、大塚明夫(ビショップ)、木下浩之(マーフィー)。
なんとまあ、舌を巻く実力派揃いであることか。これを、舞台俳優と声優を組み合わせて演出したただの実験、と見るのは短絡的だ。なぜならここにはアイドルとかトレンディ俳優とか、シロウトに毛が生えただけの人気声優などは、ただの一人もいないからである。……石田ゆり子や田中裕子を使った某監督とは雲泥の差があるよなあ。
09月07日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る