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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■MURDER IS EASY/『詩的私的ジャック』(森博嗣)ほか
 そんなやつはもともと小説に描くに値するようなヤツではない。でも、そんな程度のヤツは現実にはいくらでもいるのである。
 人と葛藤することも知らず、短絡的に、しかし犯罪をカモフラージュする程度の知性はあるイビツな人間。
 そんなやつのことなど、理解出来るはずがない。謎が、そこにあるだけ。そして最後に「彼がやった」という事実だけが。
 だから、伏線も描けない。

 では森作品は純文学か? と言われれば、それも違う。
 強いて言えば、これは「伝奇小説」なのです。
 
 犀川創平が言うように、「要は幻想の有無」である。言葉は意味を伝えるためにある。しかし言葉で説明出来ることがどれだけあるだろう。結局は全て不可知の海に沈む。
 その事件の先に何があるか判らず、一応の解決をつけても結局は何も解ったことにはなっていない。純粋なリドル・ストーリー、それが森ミステリの正体なのだ。
 「伝奇小説」は未完をもって基本となすように。

 森ミステリを読むのもこれで5冊目。
 犀川と自分の共通点を感じるたびに苦笑いをせざるを得ない。こういう人間に無関心な人間は必然的に非道になってしまうものだが、犀川が犯罪者とならないのはひとえに西之園萌絵の存在による。
 で、私が犯罪者にならないでいられるのも……おっと、タイムアウトだ。余り誰かさんばかりを喜ばすことまで書いてやっても仕方ないのである。

06月07日(木)
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