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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■筑紫は国のまほろば/映画『ギミー・ヘブン』
村の中には、竪穴式住居が二十戸ほど再現されている。いくつかの家の中には実際に入ってみることもできる。中は正直、とても広いとは言えない円形の空間で、せいぜい四畳半程度しかなく、真ん中に穴が掘ってあって囲炉裏のようになっているので、脇で寝ようと思ったら、膝を曲げて横になって寝るしかない。しかしそれも弥生人の生活の様子が想像せられて、こういうのが好きな人にとってはたまらない魅力だろう。しばらく中で木の株の椅子に座ってのんびりしてみたが、外はかなり寒かったのだが、中はだんだん暖かいように感じられてきた。茅葺の屋根には今朝の雪がまだ残っていたが、中までその冷気が染みこんでくることはない。雪や暴風程度では吹き飛ばされないほどの頑丈さはありそうだった。子豚もこれなら狼から身を守れそうである。
運動のために来たのに、骨休めに来た感じになってしまった(苦笑)。でもまあ、いかにも立春らしくていいかなとも思う。
夜、シネ・リーブル博多駅で映画『ギミー・ヘブン』を見る。
ある大企業の会長が、自宅の豪邸で殺害された。現場には奇妙な文様の血痕が残されていたが、それが何を意味しているのか、捜査員の誰にも理解することはできなかった。その家の養女・麻里(宮浮おい)は幼いころに両親をなくし、施設で育てられていたのだが、これまでに三度、富豪の養女に貰われ、受け入れ先の親がみな謎の死を遂げるという奇妙な符号を見せていた。しかし、どの事件においても犯人は挙がっており、麻里が嫌疑を受けろことはなかった。
自分が感じたり見たりしたものが他人と違う感覚を伴って脳にインプットされてしまう「共感覚」の持ち主、葉山新介(江口洋介)は、相棒の野原貴史(安藤政信)と組んで、インターネット上で盗撮サイトを運営していたが、ある日、ある女の一室に仕掛けていたカメラに異変が生じているのを発見する。女は失踪し、そのベッドにはあの「文様」と同じものがマーキングされていたのだ。それはかつて人々を自殺や殺人に駆り立てた伝説のネット犯罪者「ピカソ」が残していたマークだった。
新介と貴史は女を探す過程で、河川敷の排水溝で倒れている少女を発見する。それは殺人事件の直後に失踪していた麻里だった……。
先に断っておくが、この映画は基本的に観客をかなり限定してしまう映画である。いや、実際は別に限定はしていないのだが、昨今は映画の見方に関して素養のない人間がゴマンと増えてしまっているので、「この描写はなぜ存在しているのか」、また逆に「この描写はなぜ存在しないのか」がまるで分からなくなつているのだ。特にこれは、「本格ミステリー映画」である。ネットの感想などを見てみると、この映画に批判的な意見を述べている人間は、軒並みこれがミステリーだということに気付いていない。
「全然怖くない」なんて意見はホラー映画と勘違いをしているし、「これこれこういう描写がないから分かりづらい」なんてのは、それを描くとトリックがバレるからわざと隠しているのである。あまりにも馬鹿意見ばかりに出会うので、ああ、日本にミステリーは全く根付いていないのだなあとまたまた悲しい気分にさせられてしまった。
『名探偵コナン』のようなミステリーとして見れば箸にも棒にも掛からない作品が人気を呼ぶのも所詮はキャラ人気でしかないし、横溝正史の原作小説の中では出来の悪い方の『犬神家の一族』や『八つ墓村』の方が映像化の頻度数が高いのはムード優先でミステリーとしての完成度など二の次にしているからだし、本格ミステリーの歴代ベストテンに選出されるような傑作が殆ど映像化されていないのも、結局は「そんなものを作っても一般の観客には何が何だか分からない」からである。
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02月04日(土)
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