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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■一般の認知度は「モナー」より「のまネコ」の方が上なんだよね/ドラマ『赤い運命』第一話
 ストーリーについての話はちょっと置いといて、焼き鳥屋の奥さんで、カラオケ・バーのマスターとデキちゃって、旦那さん捨てて街金の借金も踏み倒して駆け落ちしようとするオバチャンの名前が「細木カズヨ」で、どう見てもその風貌があのヒトってのは、作者の細野さん、細木某に何か恨みでもあるのだろうか(笑)。
 小泉じゅんが「月影ファイナンス」に入社して一年ちょっと、という設定が語られるが、ということは、一応、物語の中の時間経過と現実の時間とはちゃんとリンクしているということのようである。けれどもそれだと、長期連載になった場合、キャラクターがどんどん年取っちゃって、絵柄との間にギャップが生まれることになりかねないけど、大丈夫なのかな。『ギャラリーフェイク』では結局フジタがサラを30過ぎまで手出しせずにほったらかすというヒドい状態にまでなっちゃったんだし。
 ともかく小泉じゅんはまだまだ新米で若い。天然ボケのドジ娘のようでいて、実はDr.WHOOの秘密に一番近いところにいる彼女が活躍してくれないことにはやはりこのシリーズは締まらない。彼女が初めて「対面与信(客が融資できる相手かどうか、値踏みすること)」に挑戦するのが巻頭の「小泉じゅん与信する!」であるが、要するに「与信」の面白さと言うのは、シャーロック・ホームズがワトスン博士に初対面で「あなたはアフガニスタンに行っておられましたね?」と推理する、あの醍醐味である。
 じゅんは結局、巣鴨店長や春居を出し抜くように、しかも本人はそんな自覚も全くなく、あっけらかんと「与信」を成功させてしまうのだが、こういうエピソードがDr,WHOOの「仕置もの」よりも面白いのは、シリーズとしてはちょっと困ることかもしれない。いやね、私ゃこのマンガはじゅんちゃんと巣鴨店長が好きで読んでるようなものだから。
 それにしても巣鴨店長、てっきり春居の正体も全部知っていると思ってたんだけど、Dr.WHOOとしての活動は知らされてなかったんだなあ。超真面目人間の店長が、「晴らせぬ恨みを晴らす」ためとは言え、「闇の取立人」としての春居の正体を知ったら、どんな態度を取ることになるのだろうかとか、そういうところも気になるんだけれど、そういう展開は今後あるのかな。巣鴨やじゅんがいつまで経っても春居の正体に気が付かないままというのも不自然なのだけれど。


 マンガ、城平京作・水野英多画『スパイラル 推理の絆』14巻(スクウェア・エニックス)。
 いよいよ次巻で完結、ミステリマンガだった昔が懐かしい本作だけれども、他の似たようなマンガとの差別化を計ろうとすると、どうしてもこんな風になっちゃうのかな。SFになりそうでなりきれなかったという印象もあるし、何より絵がヘタなのが最後までストーリーの足を引っ張ってたと思う。心理劇にアニメ絵は向かないよ。『デスノート』の小畑健くらいのリアルさがないとねえ。
 13巻で、清隆と歩のDNAが一致したということは既に語られていたから、この二人に残されていた「謎」に気付いた読者はたくさんいたと思われる。原作者自身があとがきで告白している通り、そのありふれた「真実」は、読者の興味を殺ぐには充分だ。仮にそのアイデアを一応は認めてやったとしても、今巻中の説明だけでは、あらゆる点が不明確で、とても「ああ、そうだったんですか」と頷けるものではないのである。
 けれども作者が覚悟の上であえてそのアイデアを志向したというのなら、さらにその先に「意外な結末」が待っていることを信じてみたいと思う。だいたいその「真実」が分かったからと言って、火澄がカノン・ヒルベルトをなぜ殺さなければならなかったのか、納得はできないし、歩が清隆に対峙しなければならない理由も未だに明確ではないのである。
 何となく説明不足のまま終わってしまいそうな気もするが、「必ずハッピーエンドになります」と作者は豪語しているのだから、ちゃんと「オチ」をつけてほしいと思う。

10月04日(火)
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