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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■切れる信者/『コメットさん』第一話「星から来たお手伝い」
そういう次第で、私は、「日ごろ、芝居がかった仕草をしちゃったという経験はないか」とか「身近な人の仕草を真似できるか」とか「芝居をすることが自分の日常のどういう役に立つと思うか」とか「こんなやつと芝居をしたい、こんなやつとは芝居をしたくないというのはどんな相手か?」「でもイヤなやつと芝居をしなければならないとしたら、どうするか?」とか、オーソドックスな質問をいくつか書いて送った。その返事が今日ようやく来たのである。
どうやら参加してよい、とのことらしいのでホッとしたのだが、森田さんの手紙を読んで、いささか眉を顰めることになった。森田さん、かなり「困って」いるようなのである。
というのが、集まってきたアンケートが、「ドラえもんの道具は何が欲しいか?」「世界を相手に何を叫ぶか?」「死ぬ前に食べたいものは?」「ブラックホールの先には何があると思いますか?」など、演劇とは何の関係もないものばかりだったというのである。森田さんには「なぜこの質問が、このワークショップで必要なのか」不可解で仕方がなかったと仰っているが、そりゃ私だってそう思う。本人たちは奇を衒って目立とうとしているのかもしれないが、下手の考え休むに似たりで、逆にみんな没個性な質問ばかりになってしまったということだ。世の中、十把一絡げのオタクのくせに「自分は個性的だ」と思ってるやつとかも多いし、こういう手合いと一緒にワークショップをするのかと思うと、ちょっと暗い気分になる。
最近の若い連中の中には、こちらがある質問を投げかけても、「なぜその質問が発せられたのか」、状況を把握できないアホンダラがやたら増えてきているが、いやしくも「自己表現」を目指す演劇関係者にこういうコミュニケーション不全なやつらがいっぱいいるというのはどうしたことなのだろう。いや、コミュニケーション不全だから演劇をしたがるのだろうか。
森田さんが困ったのは、「そういう人たち」を落としていけば、今度は参加者がいなくなってしまうということだったのだろう。自分とこのスタッフにも四国四県が言えなかったり、夏目漱石がどういう人か知らなかったりする「バカを気取った」「アンチ優等生を誇る」人たちがいて、「そんな彼らがイッセー尾形の芝居を支えている」と納得した上で、「あれこれ考えるより、顔を合わすのが一番なんでしょう」「失敗したって、笑われるだけなんだから、いい思い出になるじゃありませんか」「お会いできるのを楽しみにしています」と手紙を結んでいる。
この日記読んでる人の中にも「バカを気取った人」はいるだろうから、あえて解説するけどね、これ、そういう人たちに対して「あんたがたがワークショップに参加しても失敗して恥かくだけだよ」「目立とうと思ってこんな質問送りつけてくるくらいだからプライドだけは高いみたいだけれど、恥かいてもいいの?」と、暗に「あんたらには来てほしくない」ってことを示唆しているのである。
かましてくれるなあ、森田さん、と思ったが、この「皮肉」がその「バカを気取った人」「アンチ優等生を誇る人」たちに果たして通じるものかどうか。いや、通じないと思いつつ、もう森田さんは腹を括っているのだろう。となれば、こちらも「やだなあ、そんな人たちと一緒になるのは」なんて言ってはいられない。どんな芝居を作ることになるのかわからないけれども、私も腹を括るしかないなと思うのである。
今度のワークショップには、下村嬢も参加すると言ってたので、首尾はどうかと電話をかけてみたのだが、「うっかり忘れて」アンケートを送らなかったとのこと。思わず「何やってんだよ!」と口を突いて出てしまったが、何とももったいない話である。せめて公演本番は見に来なよ。
森田さんの手紙のことを紹介すると、「そういう人たちに限って、自分たちはすごくよくやってるって思ってるんですよ」と仰る。確かに、演劇関係者にしろ、オタクにしろ腐女子にしろ、「当たり前」や「普通」ができない人ってのが「悪目立ち」しているのである。
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09月05日(月)
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