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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■いいんだぜ/映画『オペレッタ狸御殿』
 物語の筋は往年の『狸御殿』シリーズを踏襲しているから、極めて単純で、人間の若君と狸姫の種族を越えた(笑)恋を描き、命を落とした姫を救うために、若君が秘薬を求めて決死の冒険を……というものだが、単純なだけに、あまりクセのある脚本家・監督に任せちゃうととんでもない映画になりかねないのだが、やっぱりそうなった(笑)。
 定番の筋ではあっても、浦沢脚本のことだから、若君の雨千代(オダギリジョー)が実の父の安土桃山(平幹二朗)に命を狙われる理由が「ワシより美しいから」だったり、狸姫の命を救う秘薬が「極楽かえるの鳴き声」だったり、こういうナンセンスを書かせたら浦沢さんの右に出る人はいないのだが、いかんせん、そういうシュールなギャグを生かすためのテンポが、既に老齢の鈴木清順には生み出せない。
 そういうテンポを作るためにも、「オペレッタ」なんだから、ミュージカルシーンが大いに盛り上がってくれないことには困るのだが、これがまるでうまくいっていない。浦沢さんの作詞はもうハチャメチャで楽しいのだ(由紀さおりの「生まれ変わってもびるぜん婆あに生まれたい」って、アンタ生まれた時から婆あなのか、と大爆笑)。けれど、肝心の大島ミチルと白井良明が作ったメロディーが、もう作曲家として恥ずかしくないのかと言いたくなるくらいのクズ曲ばかりなんである。記憶に残るメロディーってのがどんなものなのか、ちったあ『サウスパーク』を見習ってくれ。オダギリジョーとチャン・ツィイーのダンスシーンも退屈なだけだぞ。
 といっても、ミュージカルのツボを外しまくった金子修介監督の『恋に唄えば』に比べればはるかにマシではあるのだが。薬師丸ひろ子の美声がこんなにいっぱい聞けるとは! 実際、この映画は平幹二朗・由紀さおり・薬師丸ひろ子の三人で“持っている”のである。
 
 正直な話、私は鈴木清順の熱心なファンとは言いがたい。一応、『ツィゴイネルワイゼン』以降の作品なら全て見ているけれども、日活時代の作品をせいぜい四、五本しか見ていないからだ。
 芸術とか映像美とか、そんな小賢しいホメ言葉が陳腐に聞こえるくらい清順監督の映画は「ヘン」なので、これはもう、私の感性としては当然「大好き」なんだけれども、どういうわけか見るチャンスを「外して」しまっていて、見損なってる映画が多いのである。エアポケットみたいな感じね。
 そのうちのいくつか、例えば『けんかえれじい』や『殺しの烙印』を見ただけでも「このカントクはイカレてるわ」ということはすぐ分かる。……と言っても、若い人は全然わかんないんだろうなあ。ヘタすりゃ、『ルパン三世(新)』の監修してたり、『美少女仮面ポワトリン』に神様役で出演してたことすら知らないかも知れない(何かのクイズ番組のレギュラー解答者として出演していて、いつもトンチンカンな答えばかり言ってたこともあったなあ。印象に残っているのは、「デブな俳優」というヒントに「岸井明」と答えてたこと。司会の紳助は目を白黒させていたが、無理もない話である)。
 だから、と言い訳するつもりはないのだが、私には鈴木清順という人があまりよく分かっていないのであって、面白いなあと感じている部分も、つまんないと感じている部分も、双方ともに印象批評の域を出ないのである。
 今回はそういうわけなんであまり突っ込んだ分析ができてないのですが、どうかご勘弁。

06月01日(水)
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