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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■虫歯が痛いよ/『探偵学園Q』20巻(天樹征丸・さとうふみや)
確かに「面白くなりそうな」要素は多々あって、カウンセリングでやってきたのに、伊良部の治療はいつもビタミン注射だけとか、患者の男の子のお母さん(未亡人)にアタックしたりとか、いったい治療のためなのか単に自分がやりたいだけなのか、「空中ブランコ」を特訓し始めたりとか(原作にもある設定だったら、デブなだけにすごい迫力だろうなあ)、これがミステリーならドーヴァー警部や吉田茂警部補、大貫警部も裸足で逃げ出すほどの傍若無人ぶりだ。けれどその個性が今一つ際立って感じられないのは、要するにドラマ作り自体が全体的に薄っぺらで絵空事めいてしまっているせいだと言えよう。こういうトンガッたキャラクターを魅力的に描くためには、たとえ周囲の人間が心を病んでいてもそれをリアルに描かなきゃならない。堺雅人はまだそうでもないが、遠藤憲一や佐藤仁美の演技はちょっと過剰で切実感がない。そもそも脚本や演出の段階で「ドラマにし損なっている」シーンが多々あって、例えば佐藤仁美が鏡を見て自分の美しさに見惚れるシーンなど、ここにキラリーン、なんてエフェクトをかけちゃうものだから台無しなんである。妄想を全て映像化すりゃいいってもんじゃない。こんな効果を入れられたら、佐藤仁美はただの馬鹿ってことになっちゃって、視聴者が同情できなくなるじゃないか。監督に「これは病気の人を扱っているのだ」という自覚がないせいでこんな事態が起きるのだ。監督の村上正典、映画の『電車男』も監督してるそうだけど、ちょっと見に行く不安材料が増えちゃったなあ。
「伊良部一郎シリーズ」が金曜エンタテインメント枠で今後も続くのなら、脚本や演出をもうちょっと考えてもらった方がいいと思うが、テレビの予算じゃそれは無理かな。意外によかったのは、看護師・マユミ役の釈由美子で、色気たっぷり子ちゃんなのだが、トンデモキャラクターばかりの中で、多分この子が状況を一番冷静に把握しているのである。なぜなら、周囲の右往左往をただ見ているだけで何もしない(笑)。まああれだね、『チキチキマシン猛レース』のケンケンの位置にいるキャラか。台詞もほとんどないのだが、ないからこそまたいいのだ。
マンガ、天樹征丸原作・さとうふみや漫画『探偵学園Q』20巻(講談社)。
どうやらそろそろ最終章が近い雰囲気なので(終わったら金田一少年を再開するつもりなんだろうな)、まああまり貶すようなことも控えようと思うが、今回収録の特別番外編『盟探偵ケルベロス編』にも類似の先行トリックを使った小説があることは指摘しとかなきゃならないし、ケルベロス自身が「稚拙なトリック」と言った通り、あんな方法じゃ証拠隠滅はできないよ。相変わらず最後のどんでん返しが「こんなことなら殺すんじゃなかった」って「犯人の勘違い」で終わるのも興醒め。
本編の方は団先生が倒れて、天草流が復讐鬼への道をたどるのかどうかというところでサスペンスを盛り上げようとしているけれども、少年マンガで一方のヒーローを本気で悪の道に走らせるわけにゃいかないわな。どこかで引き返すか、催眠効果で自分の犯罪に気が付かずにいたから無罪ってことになるか、実は初めから祖父のキング・ハデスに対抗するつもりでいて罪は犯さずにどんでん返しで終わるとか、天樹・佐藤コンビはもうこれまでありふれた展開しか描いてこなかったから、こんな陳腐な展開予想しか浮かばない。で、多分どれかで当たってるんだよ、きっと。
それはそれとして、“冥王星”キング・ハデスの本名が「国王星彦」ってネーミングセンス、何とかならんのか。
05月27日(金)
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