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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■宮崎駿監督、栄誉金獅子賞/映画『きみに読む物語』ほか
 腹を立てつつも五回続けて見てくると、どうやらスタッフはマトモなミステリーとしてこのドラマを作ろうという気はあまりなくて、コメディとしての面を強調したいのだな、ということは見えてくる。もちろん原作がもともとスラップスティックギャグとミステリーの融合という破天荒な設定なので、ギャグ主体の映像化になるのはアリっちゃアリなのだが、そのギャグセンスが『トリック』なみという実にお寒い状況なのはどうにかならないものか(だから脚本家が『トリック』の人だから)。……筒井康隆、剣山踏んづけて「ギャ〜」とか叫んでないで、脚本チェックくらいしてやれよ。
 ガッツ石松を「今」使うなら、どうしても「OK牧場」を言わせたくなるのは気持ちとしては分かる。昔の高瀬実乗の映画を見ていて彼が「あーのね、オッサン、わしゃかーなわんよ」と言わなかったらガックリするようなものだ(譬えが古いがこれくらい適切な譬えもめったにないので、ご了承頂きたい)。けれど『笑の大学』の「猿股失敬」のようなもので、これくらい要らないセリフもない。西村雅彦のセリフをそのままに言えば「これで笑える客の気が知れない」である。フカキョンが「『OK牧場』ってなに?」と首を捻るが、私は脚本家の首をこそ捻りたくなった。
 ミステリーとしては活字の場合は生きるトリックも映像にするとこんなにダサダサになるものかと情けなくなった。まあ『ホテルの富豪刑事』は原作短編の中でもちょっと無理があるエピソードなのだが、それにしても美和子の提案の奇抜さが本当に奇抜なものとして視聴者を驚かすというレベルにまで板っていないのは悲しい。エンジェルホテルだけに100人以上空室があるなんて状況があったら、いくらヤクザが馬鹿でも警察の企みに気付かなきゃおかしいよ。「まさかそんな大掛かりなことが警察にできるはずがない」と判断する以上に異常な事態なんだから。警察の存在には気付いてるけど“あえてその計略に乗った”って展開にしたほうがまだドラマチックになろうというもんだ。
 短編を一時間持たせるために付け加えたもう一つの殺人事件も馬鹿馬鹿しいくらいのクズトリックで(つか、トリックになってない)、脚本家の頭をこそ打ち抜きたくなったが、メイントリックの方も、犯人役をあの人にやらせちゃダメでしょうよ、としか言えない。それともまさかコイツに犯人役をやらせはしないだろうという意外性を狙ったのつもりなのか? だったら大失敗だよ、それ。
 それにしてもいつまで経ってもフカキョンがお嬢さまにも名探偵にも見えてこないのはどうしたらいいんでしょうかねえ。配役交代が無理なのは承知なんで、私ゃもう脳内変換で別の役者想定して見てますよ。でもそういうときに「お嬢さま」を演じられる女優として思い浮かぶのが若いころの原節子とか久我美子とか香川京子とか山本富士子とか桜町弘子とか北沢典子とか、これもまた古くて若い役者を思いつけないのが現代の女優不在を切実に感じさせてしまうのである。


 8月に開催される第62回ヴェネチア国際映画祭で、宮崎駿監督が栄誉金獅子賞を受賞することが決まったとか。これで宮崎さんは、ヴェネチア、ベルリン、カンヌの三大映画祭の全てで一応何らかの受賞経験があることになった。
 けれども、こういう「栄誉」賞ってのは、本当はもっと早くに受賞させなきゃいけなかったんだけど、時の運であげ損ねたり、もう引退寸前で「功労賞」としてあげる場合が殆どなので、あまり嬉がってもいられないのである。つまりは「これからあんたがなんか映画作ってもコンペには参加させないよ」って意味なんだよね。だから来年以降、宮崎さんが映画祭に参加しても受賞はもうさせないよって言ってるようなものだから、招待作品になるか、特集上映になるかのどちらかしかなくなっちゃったのだ。まあそれだって確かに「栄誉」ではあるんだけれどもね。

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02月10日(木)
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