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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■女になって出直せよ/『DEATH NOTE(デスノート)』4巻
 私はハッと気付いた。私は未だにハカセの身体の中にいたのだ。
 「どっちって……。どっちなんでしょう?」
 私にも私が私なのかハカセなのか分からなくなっていた。ふと、背後に気配を感じて後ろを振り向くと、ジャングルジムの上に、誰かが座っている。確かに知っている顔なのだが、誰だか分からない。鴉丸嬢でもなければカトウ君でもない。男か女かすら、判然としないのである。
 “誰か”は、ホースを持っていた。怒っているような、無表情のような、どっちともつかない顔で、ホースの口を私に向ける。水流がほとばしり、私を打った。
 「やめて、やめて」
 水流は止まらない。私の全身が滝に包まれた。しげもよしひと嬢も、にやにやと笑うばかりで私を助けてはくれない。バチがあたったのだ、という顔つきで、私を嘲笑っているのだ。
 ばち? 何のばちか? ハカセのからだを乗っ取ってしまったこと?
 でもそれは、そもそもしげのやらかしたことじゃないか!
 しかしその私の反論はしげには届かなかった。私の身体は水流の中で、とうの昔に消え去ってしまっていたからである。

 そこでようやく目覚めた。
 夢はたいてい見た直後に忘れちゃうのだが、これは知った顔がたくさん出たせいもあったのか、珍しくも鮮明に覚えていた。
 オチはなんだかホラーっぽくなってしまったが、目が覚めてふと気になったのは私の魂がハカセの身体に入っていた間、ハカセの魂はどこに行っていたのか、ということである。それを想像すると、ハカセが気の毒でならない。つか、シツレイ千万な夢見るよなあ、オレも。


 全体集合の練習日ではないのだけれども、朝からカラダの空いてる者を集めての公演の練習。
 香椎のジャスコの屋上駐車場で、加藤くん、細川嬢、よしひと嬢と合流。人がいないのはいいけれど、風は強いわ雨はときおりパラつくわでめっちゃ寒い。初めは外で演技してもらって様子を見るつもりだったのだけれど、しげも加藤くんも「たまらんごつなって」(^o^)、車の中に避難、本読み中心の練習になった。
 しげの「セリフが上ずる」クセはかなり治ってはきているのだけど、それでもまだ喋りが「普通の人」っぽくない。こないだの練習の日に見学者の方が来られたとき、しげはずいぶん恐縮して、たどたどしく控え目に喋っていたのだが、例えばあんな感じで演技をしてくれればいいのである。それが興奮するとヤンキー口調になったり広島ヤクザ風になったりするので、かなり細かく修正を入れてかねばならないのである。一つカンを掴んでくれれば、かなりいい線まで行くとは思うのだが。
 細川嬢は、かなり詳しく照明プランを立てて来てくれていた。会場のアクロスに提出する見取り図のほかに、脚本に合わせた各画面ごとの照明設定図を十数枚、照明の位置から色合いから考案して描いて来てくれていたのである。脚本段階ではとてもそこまで計算に入れてはいられなかったので(つか、色弱で色彩感覚がないので、設定のしようがないのである)、実にありがたい。
 演劇関係者でも、こういう一見地味に思える裏方の仕事をいやがる人もいたりするのだが、細川嬢、「いえ、おもしろいです」と言ってくれる。なんだか今回の公演はホントにいい子が集まってるなあ。
 細川嬢は午前中で引き上げて、あとは3時ごろまで練習と打ち合わせ。
 加藤くんは、先日脚本を改訂して付け足した部分の覚えがまだまだ。「明後日までに覚えといてね♪」とダメ出しする。
 加藤くんは、先日、見学者の方に誉められた途端に演技の固さがひょいと取れたので、どうやら誉められて伸びるタイプのようだ。ところが私は、男は滅多に誉めない(なんか男が男を誉めるのに抵抗あるのよ)。加藤くんにしてみれば相性の悪い演出家、というより、努力の芽を摘むよくない演出家ということになろう。そのことは申し訳ないと思っているので、あまりキツイことは言わないように気をつけようと心に決めちゃいたのだが、つい口が滑ってしまうのである。でもよしひと嬢の寸鉄ヒトを刺すヒトコトには敵わないからなあ(^o^)。



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11月03日(水)
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