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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■父の引退と恍惚
 となれば、上杉さんには改めて小林さんを訴えなけりゃならない理由はないはずなので、いったいなんでまた「名誉毀損」なんて訴訟を起こしたのか、理解に苦しんでいたのである。結局は、「訴えられたんだから訴え返してやれ」っていう幼稚な発想だったんだろうけれど。第一「名誉毀損」を持ち出すなら、上杉さんの『脱ゴーマニズム』だって小林さんへの「中傷」と見なすことだってできる。そうではなくて、あくまで「引用による批評」と見なされたからこそ、上杉さんは勝利することができたのではなかったか。小林さんが上杉さんを「ドロボー」呼ばわりしたのだって、『脱ゴーマニズム』の「引用」が行われた上での「批評」の範疇内にあり、それを訴えることは、上杉さんが自分で自分の首を締めているのと変わらない。小林さんは常に馬鹿を自認しているが、上杉さんは自分が馬鹿であることに気付いていない馬鹿だった、ということである。この論争については上杉さんの方にまだ理がある、と思っていただけに、上杉さんが自滅してしまったことは残念なことであった。
 今回の判決で重要なのは、「(盗作だなどとする)法的な見解の表明には、特定の事実の摘示を含む場合があることは否定できないが、判決で結論が示される事項だとしても、法的見解自体が事実の摘示とは言えない。小林氏の表現は意見や論評で、互いに著作の中で批判し合っていた経緯から人身攻撃に及ぶとまでは言えない」と結論づけた部分である。
 つまり、「ドロボーって言い方がどんなにひどくっても、それが『意見』である以上は認められなきゃならず、事実に合致してるかしてないかは関係ないし、傷つけたことにもならない」ということなんである。
 だから、「『ゴジラ×メカゴジラ』って『エヴァ』のパクリだよな」と言っても、名誉毀損には当たらない……って、そんなの当たり前で、裁判にかける方がどうかしてるよなあ。上杉さん、よっぽど血が上ってたんだろう。上杉さんは、「ドロボー」って言われて怒ったのなら、それをまた再反論するか、無視すればよかったのである。それだったら敗訴してアタマの中身疑われずにすんだと思うんだけど、やっぱり根っからの馬鹿はしょうがないってことか。


読んだ本。
ロバート・アーリック『トンデモ科学の見破り方』、
戯曲、ケラリーノ・サンドロビッチ『カメレオンズ・リップ』、
雑誌、『言語』8月号、
雑誌、『キネマ旬報』7月下旬号、
マンガ、青山剛昌『名探偵コナン』46巻。

07月15日(木)
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