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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■オタクの末路?/『吼えろペン』8巻(島本和彦)/『フロイト先生のウソ』(R・デーゲン)/DVD『マジンカイザー死闘!暗黒大将軍』
「実証的データを元にした検証」というのが謳い文句ではあっても、そのデータの抽出が恣意的であれば導かれる結果は当然誤る。そのことを戒めている本書が同じ過ちを犯していては、失笑を買っても仕方があるまい。
もう少しその「実証」の内容を細かく見てみる。
「無意識」の項で、筆者は「投影」(=性衝動や願望、罪の意識を他人に無意識的に移し替える防衛機制)などあり得ない、と否定する。分りやすく言えば、誰かが「あいつは陰険なやつだ」と非難したら、実はそれは自分のことを語っている、というものである。
この時点で、「そりゃそういうこともあるだろ」とたいていの人は納得すると思うのだが、筆者は納得しないのである。彼はデヴィッド・ホームズの実験を紹介してそれがいかに間違っているかを説明する。
被験者にまず自分の欠点を挙げてもらった。次に、彼が他人の欠点をどう思っているかも挙げてもらった。また、知人・友人にも被験者に対する評価も挙げてもらったのである。結果、友人から指摘された欠点を被験者が他人に投影している例は全く見られなかった、というのだが、さて、この実験が実験として成立していると言えるだろうか。こんな杜撰な実験で「投影はない」などと結論付けちゃいかんのじゃないか、と誰でも気づきそうなものなのだが。
「あいつはおっちょこちょいだよな」
「そりゃお前のことだろ」
こんな会話を友人間でしたことのない人間はいないだろう。ネット上の論争でも「そのセリフそのままお前に返すぜ」というパターンは実に多い。みんな「目糞鼻糞を笑う」例はいくらでも知っている。
「投影」はコムズカシイ心理学用語のなかでも一番理解しやすいものの一つである。「投影」は現実にあるのだ。なのになぜこの実験では被験者が他人に「投影」をしなかったのか。被験者が想定した「他人」に自分の中にあるような欠点が発見できなかったか、あるいはこんな「あなたの欠点と他人の欠点を挙げて下さい」と言われれば、それが何の目的で行われてるかを被験者が気づいてあえて投影を行わなかった、と考えるのが妥当だろう。こんな実験は何の証明にもなっていないのである。
一つ一つの例を詳しく見ていくとキリがないのだが、「心身症」も「多重人格」も全てウソ、心理療法はプラシーボ(偽薬)効果以上の効果を上げていない、などと断定されると、そりゃなんぼなんでも言い過ぎやがな、と反証を挙げたくなってしまうのである。「臨死体験」や脳に関する「10パーセント神話(=脳の90%は使われていない)」「右脳左脳」などに疑義を提するあたりが納得できるだけに、我田引水的な部分が結構目立つのが残念なのである。
DVD『マジンカイザー 死闘!暗黒大将軍』。
第2シリーズが作られるとばかり思ってたのだけれど、結局1時間のスペシャル完結編でおしまい、ということなのかな。ブロッケン伯爵、ピグマン子爵、ヤヌス侯爵は未登場のまま、私が一番好きな原作エピソード、「ドナウα1」(考証的には正しくても「ラインX1」にしちゃダメなんだよう)も映像化されないままだから、ホントはここで終わってほしくはないんだけど。
地獄大元帥でもう一本、ということも考えられなくはないけれど、ミケーネの七大軍団は使い切っちゃったし、スケールダウンするのは否めないものなあ。テレビシリーズだって闇の帝王との決着はつかないままだったから、まだまだ未消化な印象は否めないのである。
けどマジンガー軍団の敗北、もりもり博士の死、ゴーゴン大公の甲児暗殺作戦など矢継ぎ早にエピソードを畳みかけて暗黒大将軍との一騎打ちに持ちこむまでの勢いはよくぞやってくれた、と感激ものである。やっぱり原作のエッセンスをちゃんと使ってくれるのが一番いいのだ。
『マジンガー』には出演していない永井豪キャラとして、リッキー(ちい子先生)、パイロット(悪馬尻直次郎)、欧州連合軍の隊長(雷沼教授)がゲスト出演。そのへんはサービスなんだろうけれど、暗黒大将軍の声は映画版の小林清志氏でもなければTV版の緒方賢一氏でもなく、飯塚昭三氏。ゴーゴン大公も加藤修氏ではなく長克己氏。どちらも悪くはないけど、オリジナルメンバーでというコンセプトが崩れちゃってるのは残念。
07月22日(火)
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