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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■騙されるほうがねえ/『たったひとつの冴えたやりかた』(J・ティプトリー・Jr.)/『ENDZONE』2巻(えんどコイチ)ほか
あの、読者のみなさま方の中で、しげのこういった一連の言動を読んで、「いくらなんでもそんなバカな人間はいないだろう、私が話を誇張しているか作ってるんじゃないか?」と思ってらっしゃるかもしれませんが、しげに関する限り誇張は全くありません。まんまです。典型的な天然かつ不思議ちゃんなのです。劇団の連中にはもっと激しい不思議ちゃんが何人もいるので一番マトモに見えるのですが(考えてみたらすげえ劇団だ)、単に総体的な問題でしかありません。
で、思い出したので書いときますが、これも実話です。
以前、空を見上げて、「実はあの空って書き割りなんだよ」としげに言ったら、「へええ」と感心してました。……信じるなよ(-_-;)。
またまたあぐにさんにSF作品を紹介しようと、本棚をひっくり返して、何冊かをセレクト。既読のものでも、やっぱり読み返さないと、とてもレビューなんて書けるものではないのである。
まずは、「これを読んでハンカチを涙で濡らさなかったら人間じゃない」とまで評されたジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの『たったひとつの冴えたやりかた』(ハヤカワ文庫・720円)。
作者は「ジェイムズ」と名乗っているが、実は女性。そして本作を遺作として、老齢で寝たきりだった夫を射殺した後に自らも覚悟の自殺を遂げた。人類の過去の歴史を語るこの短編集に込められた、作者の最後の思いを感じながら読むことも可能だろうが、私は余りそういう読み方はしない。作品論と作家論は分けて読むほうなもので。
表紙イラストが川原由美子で、これもポイント高し。
『エヴァ』の最終回はハーラン・エリスンの『世界の中心で愛を叫んだけもの』(こちらは余り好きじゃないので奨めない)から取られているが、設定資料だと当初はこの『たった一つ』になる予定だったことが分る。話に共通性は……あるんかなあ?(^_^;)
16歳になったばかりのお転婆娘のコーティー・キャス。親にナイショで憧れの星空に飛び出した彼女は、宇宙の裂け目「リフト」で奇妙なエイリアンに出会う。それは分子なみに超微小なイーアという種族の「少女」で、なんとコーティーの頭に住みついてしまった!
なぜか意気投合してしまった二人(?)は、更なる宇宙の冒険に旅立つのだが……。
リリカルなSFが好きな人にはたまらなく切ない物語だが、正直言って、昔、最初に読んだときには、主人公コーティ・キャスの「青二才」……と言うか、はっきりと「バカ」だよねえ、この子。そのバカっぷりがどうにも付いて行けなくて、鼻白んだものだった。ラストの切なく厳しい彼女の決断も、「結局は自業自得じゃん?」てなもんで「『好奇心猫をも殺す』って言葉知らない?」って彼女に言いたくなっちゃったのである。
それに、この物語の基本設定は、トム・ゴドウィンの『冷たい方程式』に属するものなので、少女に対して一片の同情も持たないこちらのオリジナルの方が私には好みだったのである。
ところがトシを取ってくると涙腺が弱くなってくるのか、バカもバカとして赦せるようになってくるというのか。読み返してみると不思議不思議、昔は腹立たしかった主人公「二人」の「バカさ」加減が、妙にいとおしくなってきたのである。
そうだよ、「人」は本来「バカ」な存在なんだ。コーティも、そして「彼女」もやはり自らを知らぬ愚か者。けれど、自らが愚かであることの運命を、受け入れたがらぬ者が、現実の世界にどれだけ蔓延していることだろう。それに比べれば、コーティたちの「決断」がいかに潔いことか。
今回読み返してみて、これならSF嫌いの人にでも推薦できるなあ、と思った次第。けれどあぐにさんはともかく、しげだったらやっぱり『冷たい方程式』の方が好みだろうなあ。
次にR・A・ラファティの『九百人のお祖母さん』(ハヤカワ文庫・699円)。
先日、こうたろう君と電話で会話したときに、「あぐにさんに『九百人のお祖母さん』を奨めるのはどうかな? あれは比較的新しいし」と喋ったら、「新しくねえよ」と言われてしまった。確かにもう30年も前の作品なのである。でもSFの黄金期を1950年代だと思ってる身にとっては、これもつい最近って感覚なんだが。
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03月04日(火)
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