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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■オタク夫婦は新年に何を買ったか/映画『狂った果実』/映画『幕末太陽傅』/『おせん』其之五(きくち正太)ほか
これもオリジナル版の方。カラーリメイク版より、こちらを推奨する人も多かろう。戦争ものはカラー映像だとどうしてもウソ臭く見えてしまう。監督の市川崑、「ビルマの土の赤」を表現したくてリメイクしたって言うけど、モノクロでも演出でその赤さは伝わるんだよ。市川崑が映画のことなんてなんにもわかっちゃいないってこと、このエピソードからバレちゃってるんだよなあ。
この映画が「偶然」モノクロであったのは映画にとって幸福であったと言えよう。
それに、なんたって音楽が伊福部昭だ! リメイク版の山本直純も悪くはないんだが、腹の底にズンと響く伊福部さんの音楽ほうが、どうしても印象としては強い。山本さんのはちょっとセンチメンタリズムに流れちゃってるのである。
主演者についても、リメイク版の中井貴一よりもオリジナル版の安井昌二のほうが、戦地の兵隊っぽいし、遺骨を埋葬しようと決意した誠実な人間に見えるってこともポイントは高い。
実は中井貴一の方が安井昌二よりも痩せてるんだが、圧倒的に安井さんのほうに軍配が上がっちゃうのはもう演技力の差としか言いようがない。
けれど、私は8:2くらいで、カラー版もちょっと好きだったりするのだ。なんたって川谷拓三がいいのよ。リメイク版は。
『狂った果実』(1956)。
太陽族映画の最高傑作のみならず、日本映画史上屈指の傑作の一つ。
太陽が燦々と輝く海にあってもなぜか漂うダークなムード、石原裕次郎が大笑すればするほどなぜか闇の気配を感じてしまうのは、「若さ」そのものがダークサイドを内包しているからではないのか。弟の津川雅彦の狂気は、当然兄である裕次郎の中にもあるのである。
誰も言わないけれど、私はこの映画、『スターウォーズ』のルーツの一つじゃないかと踏んでるんである。若いころの裕次郎がルーク・スカイウォーカーを演じたらきっとハマったろうなあ。オビ・ワン・ケノービはもちろん三船敏郎だ。ハン・ソロが勝新太郎で、レイア姫が藤純子だったら、確実に本家『スターウォーズ』を凌駕してたな。あと、ダース・ヴェーダーの声は山形勲(ホントは成田三樹夫と言いたいとこだけど、ホラ、あの『宇宙からの……』のアレがあるから)、モフ・ターキンは月形龍之介で(^o^)。
おっと脱線脱線(^_^;)。
主演の裕次郎も、監督の中平康も既に故人だが、助監督の蔵原惟繕も、昨年12月28日に亡くなった(関係ないが、プロレタリア作家の蔵原惟人とこの人、何の関係もないのだろうか)。なんだかみんな、ラストシーンで海に散華してしまったかのようだ。
実際、裕次郎は、デビュー2本目のこの映画での輝きを、生涯越えられなかった。
『幕末太陽傅』(1957)。「傅」は「伝」のことだけど、ネットでも間違った「伝」のタイトルのほうが流通してるなあ。困ったもんだけど。
それにしても全く、これだけの傑作群をこのころ日活は連発してたんだなあ。私がビデオテープで初めて買った日本映画がこれ。当時は大枚叩いて17000円もしたよ(T∇T) 。
この映画を「噺」として見ると、本職の立川談志などには全くもって噴飯ものにしか見えないらしいが、そりゃもちろん、これが落語に取材していてもあくまで「映画」なんで当然である。居残り佐平次が実は肺病病みなんて、落語ファンなら怒って当然。私のように映画も落語も好きって人間にとっては、こういう設定はどうにも評価に困る映画なんである(~ー~;)。
フランキー堺の、これが頂点の演技を見られるだけでも素晴らしいが、今見ると、ほかにも脇役陣が実にイイ演技をしていて、画面の隅々にまでつい目が行ってしまう。
中でも、近年は三谷幸喜映画の常連の感のある梅野泰靖の若旦那、セリフの間がすっげーいいんだよ。これぞ究極の若旦那。チョイ役以外にもいろいろ使ってほしい人なんだけどなあ。
なんだか元日から映画三昧である。これで今年も体力持つのかね(ヒトゴトみたいに)。
マンガ、きくち正太『おせん』其之五(講談社/イブニングKC・580円)。
ふと気づいたが、これだけ料理マンガが溢れてる中で、私が今買ってるやつって、この『おせん』だけなのであった。
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01月01日(水)
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